カテゴリー別アーカイブ: 読書の記録

嫁菜と都忘れ

7月から通勤路で咲いている嫁菜.

通勤路のヨメナ,2019年7月3日
通勤路のヨメナ,2019年7月3日

(7月3日の日記では嫁菜はWikipediaで秋咲きとあることから,春咲きの深山嫁菜(野春菊)としましたが,嫁菜は秋咲きでも花期は7~10月ということのようなので嫁菜に訂正します)

この時期に同じように咲いている姫女菀のように,大量の花をつけ

ヒメジョオン,2019年7月21日
わが家のヒメジョオン,2019年7月21日

辺りを席巻しようとすることもなく,ひっそりと咲いているが,

通勤路のヨメナ,2019年7月24日
通勤路のヨメナ,2019年7月24日

ここ数日ブロック塀脇で咲き始めた花は整っていて抜群に美しく

通勤路のヨメナ,2019年7月28日
通勤路のヨメナ,2019年7月28日

その優美な花色が心和ませる.

嫁菜という名前は「この仲間で最も美味で,花が優雅なことから」(野草見分けのポイント図鑑,講談社,2014)つけられたとあり,嫁のように働きもので,美しい,という意味のようだ.

野春菊(嫁菜)の園芸品種の都忘れの名前は,佐渡に流された順徳帝が庭で咲いている紫の野菊を見て

「紫といえば京の都を代表する美しい色だったが、私はすべてをあきらめている。花よ、いつまでも私のそばで咲いていておくれ。都のことが 忘れられるかもしれない。お前の名を今日から都忘れ と呼ぶことにしよう」

という逸話よりつけられた(季節の花300,都忘れより)ということだけれど,紫が京のシンボルカラーであるという説より,むしろ,この花色の組み合わせが不思議と人の心を癒やす力があるからのような気がします.

紫陽花の開花とグリーンアイ

今年は,なんとなく例年と開花ペースが違う感じ.

去年までもそうだったかも知れないけれど,玄関でヤマボウシとクレマチス・ビェネッタが一緒に咲いています.

C. ビェネッタ,S. ラプソディーインブルー,ヤマボウシ,2019年6月8日
C. ビェネッタ,S. ラプソディーインブルー,ヤマボウシ,2019年6月8日

バックヤードに植えていて変化に気付きにくかったジューンベリーも玄関側に移植して色づき始めたのに気づきました.

ジューンベリー バレリーナ,2019年6月9日
ジューンベリー バレリーナ,2019年6月9日

堤防側のメインガーデンでは,遅咲きなのか普通咲きなのか分からないけれど,クレマチス・ガブリエルが咲き始めました.

C. ガブリエル,2019年06月9日
C. ガブリエル,2019年06月9日

横顔が素敵なこのかたも,

C. プリンセス・ダイアナ,2019年6月9日
C. プリンセス・ダイアナ,2019年6月9日

このクレマチスは最初は花付きが悪かったけれど,陽あたり良い場所に移して生長したからか,もともとのミニオベリスクでは全く不足で,隣のつる薔薇のハーフアーチに登っていって,高さ2.2m以上に到達していて,今年種まきし損ねた朝顔の代わりにグリーンカーテンにいいかも.

デッキの上ではメンテフリーのドリフトローズも開花.

Min. ピンクドリフト,2019年6月9日
Min. ピンクドリフト,2019年6月9日

最も好きな薔薇ウィリアムシェークスピア2000も霞む素晴らしい花色と香りのオールドローズも開花.一緒に咲いているドクダミは匂いは薬っぽくてあまり好きでないけれど,花としては好きで園芸植物とのコンビネーションも良い感じ.

HP スブニール・ド・ドクトル・ジャメイン, C. 紫子丸,ドクダミ,2019年6月9日
HP スブニール・ド・ドクトル・ジャメイン, C. 紫子丸,ドクダミ,2019年6月9日

メインガーデンのセンターのピエールのオベリスクでは

C. ミケリテ,R. ブルーランブラー,西洋アジサイ エンドレスサマー,2019年6月9日
C. ミケリテ,CL ピエールドロンサール,R. ブルーランブラー,西洋アジサイ エンドレスサマー,2019年6月9日

クレマチス・ミケリテも開花し,

C. ミケリテ,CL ピエールドロンサール,R. ブルーランブラー,2019年6月9日
C. ミケリテ,CL ピエールドロンサール,R. ブルーランブラー,2019年6月9日

その後ろのメインガーデンセンターのもう一つのテーマとするつもりの,ブルーランブラーはまだ背が低いけれど,咲きそろった.

クナウチア アルベンシス,HMsk バレリーナ,R. ブルーランブラー,2019年6月9日
クナウチア アルベンシス,HMsk バレリーナ,R. ブルーランブラー,2019年6月9日

(勢いを増している雑草抜いていて,間違ってクナウチア1本引き抜いたけれど,こぼれ種で増えるというので大丈夫なはず)

ピエールの隣の西洋アジサイ エンドレスサマーも,梅雨入りしたこの日には爽やかなブルーに色づき始めていました.

西洋アジサイ エンドレスサマー,C. ミケリテ,CL ピエールドロンサール,2019年6月9日
西洋アジサイ エンドレスサマー,C. ミケリテ,CL ピエールドロンサール,2019年6月9日

エンドレスサマーはいたって元気だけれど,

西洋アジサイ エンドレスサマー,2019年6月8日
西洋アジサイ エンドレスサマー,2019年6月8日

去年の夏の酷暑の影響で,ヤマ(清澄沢)アジサイからの園芸品種 ジャパーニュミカコは枯れこんだ枝が多く不調で,

ヤマアジサイ ジャパーニュミカコ,2019年6月8日
アジサイ ジャパーニュミカコ,2019年6月8日

ヤマトアジサイ 古代紫は枯れてしまいました.

(日本語の漢字表記の「紫陽花」は,白居易が「ライラック」に対して用いた漢字をあてているとか-Wikipediaの「アジサイ」の項目より)

ベンチの両脇に植えている大好きなレモン香のダマスクローズ.

D. マダムゾイットマン,2019年6月9日
D. マダム・ゾイットマン,2019年6月9日
D. マダム・アルディー,2019年6月9日
D. マダム・アルディ,2019年6月9日

「最も美しい白薔薇」というひとがいるのは,透明感のある白の整った花容にグリーンアイがあるだけでなくて,たぶん美しいライトグリーンの葉色とのコントラストがあるからだと思う.

以前北側道路の花壇に植えつけた,わが家で最新のイングリッシュローズ.

陽あたりの良いベンチの後ろに移植したけれど,花付き抜群で,昨日まで降り続いた雨で花が地面に倒れていたので,古い花がら摘んで,小柄な薔薇なので,ベンチ後ろに植えていても良く見えないので,ベンチ横の美しい白薔薇との間に移植しました.

D. マダム・アルディー,ER ハーロウカー,2019年6月9日
D. マダム・アルディー,ER ハーロウカー,2019年6月9日

この薔薇も抜群に美しい花色と花型だけれど,

ER ハーロウカー,2019年6月9日
ER ハーロウカー,2019年6月9日

よく見るとグリーンアイがあるかも.

大学よりレベルの高かった高校の英語の時間,’green eye’ はシェークスピアのオセロからの出典で「嫉妬に狂った眼」のことをいう,と記憶があるけれど…

愛してなお信じ得ず,疑って愛着する,

薔薇ピースが咲きました

朝わんこさんといつものように堤防の遊歩道を散歩して家に戻ったら,わが家で唯一の絞りのモダンローズが開花.

F. ソルベフランボワーズ,2019年5月26日
F. ソルベフランボワーズ,2019年5月26日

家の庭でないけれどお隣の社宅の庭で野薔薇が開花中.

お隣の野薔薇,2019年5月26日
お隣の野薔薇,2019年5月26日

綺麗だけれど,野薔薇なのに鋭い棘があってちょっと怖い.

バックヤードの入口では挿し木したラプソディーも開花.

S. ラプソディーインブルー,2019年5月26日
S. ラプソディーインブルー,2019年5月26日

隣で咲いている野草の春紫苑も好き.

ハルジオンとサンショウ,2019年5月26日
ハルジオンとサンショウ,2019年5月26日

2代目のバロンジロードラン.テッポウムシで枯らされた1代目が北面に誘引していたけれどわが家で最大の薔薇になったのに比べて,2代目はナーセリーの違いもあって,小さいままだけれど最初の花.

HP バロン・ジロード・ラン,2019年5月26日
HP バロン・ジロード・ラン,2019年5月26日

玄関のカーポートの東側に続いて西側でもラプソディーが開花.

S. ラプソディーインブルー,2019年5月26日
S. ラプソディーインブルー,2019年5月26日

フロリバンダのように蕾がいっぱい.

四季咲きクレマチスの3番目は紫子丸.

C. 紫子丸,2019年5月26日
C. 紫子丸,2019年5月26日

去年不調だったけれど,次に咲くのはこの宝石のようなクレマチスのはず.

C. ビエネッタ,2019年5月26日
C. ビエネッタ,2019年5月26日

ラミウム4種組で買って,メタル調の網目の入るシルバーリーフが気に入って,他のに比べて弱くて全然増えなかったけれど,結局これだけ残っていたのも開花.

ラミウム,ヘルマンズブライト,2019年5月26日
ラミウム,ヘルマンズブライト,2019年5月26日

ゲラニウムの2番目に開花したのは斑入り/絞りのこの花.

G. スプリッシュ・スプラッシュ,2019年5月26日
G. スプリッシュ・スプラッシュ,2019年5月26日

ベンチの両脇に2種2本植えているグリーンアイの白薔薇のひとつのベンチ左の方のが開花.

B. マダム・ゾイットマン,2019年5月26日
B. マダム・ゾイットマン,2019年5月26日

ベンチ右側の方のマダム・アルディーはまだ.

同じ香りのブルボンローズでも昨日咲いたドルーアン

B. ゼフィリン・ドルーアン,2019年5月25日
B. ゼフィリン・ドルーアン,2019年5月25日

がオールドローズ香(ダマスク香)なのに対して,白薔薇のゾイットマンやアルディーは大好きなレモン(シトラス)香で,「むかしの人(別れた恋人)の袖の香」(伊勢物語,花橘).だから,ベンチの両脇に植えています.

ベンチの後ろではわが家で最新のイングリシュローズも開花.

ER ハーロウ・カー,2019年5月26日
ER ハーロウ・カー,2019年5月26日

耐陰性があるということで北西端の花壇に植えていて,やはり花付き悪くて,南側のベンチ後ろに移植したけれど,すごい棘...

ハーロウカー植わっていた場所には,今年開花しなかった八重咲きライラック移植して,余っていた所に,わが家で最新の薔薇(少し期待外れ)を,日陰の方が良さそうなので,今日定植しました.

S. ブルームーンストーン,2019年5月26日
S. ブルームーンストーン,2019年5月26日

ブルームーンストーン植えるためにポットを移動させていて,昨日蕾だったピース,

HT ピース,2019年5月25日
HT ピース,2019年5月25日

今日開花しました.

HT ピース,2019年5月26日
HT ピース,2019年5月26日

堤防側のフェンスでは,去年初めて庭に取り入れた宿根草,クナウチア アルベンシスが咲いていて,なかなかうまく写真とれなかったけれど,本日夕方なんとか1枚撮影.

クナウチア アルベンシス,2019年5月26日
クナウチア アルベンシス,2019年5月26日

去年買うとき,最初はエキノプスにしようかと思ったけれど,高いし適当なのがなくて,目についたクナウチアに.

何年か前に育てたスカビオサと同じマツムシソウ科の植物で,花は綺麗だけれど,葉が雑草そのもので,ちょっと...だけれど,背が高くて(メッシュフェンスは 1 m高さ)風に揺れるのは良い感じだし,しょっちゅう強風が吹き抜けるところだけれど,支柱なしで大丈夫みたい.

夕方もう一度わんこさんと散歩するとき,通ったアーチの薔薇の最初の一輪が咲いていました.

N. ブラッシュノアゼット,2019年5月26日
N. ブラッシュノアゼット,2019年5月26日

 

 

望樹記2018

園芸植物の名前は覚えやすいけれど,山や川原に自生しているふつうの樹木の名前は覚えにくい.

庭の先の清流の対岸にある2本の落葉樹.

広瀬川,2018年3月3日
広瀬川,2018年3月3日

たぶんこちらの川岸の川沿いに生えているの

広瀬川,2017年10月8日
広瀬川,2017年10月8日

 

広瀬川,2016年9月25日
広瀬川,2016年9月25日
広瀬川,2016年8月14日
広瀬川,2016年8月14日

と同じ水辺で育っているので過湿に強い木なのだろうけれど,何の木なのだろう.


「望樹記」は幸田露伴の随筆(1948)

興味のあるかたは,旧庭ブロの記事をお読みください.

 

野萱草と枸杞

9月半ば過ぎて,なんとなく秋の気配の通勤路.

道端に鮮やかなオレンジのノカンゾウ(野萱草)の花.

通勤路のノカンゾウ,2017年9月14日
通勤路のノカンゾウ,2017年9月14日

ノカンゾウはヤブカンゾウ(藪萱草,忘れ草)

通勤路のヤブカンゾウ,2017年7月21日
通勤路のヤブカンゾウ,2017年7月21日

が八重の花であるのに対して一重の花

通勤路のノカンゾウ,2017年9月14日
通勤路のノカンゾウ,2017年9月14日

でヘメロカリス(ギリシア語で「1日の美」,ディリリー)といった方が分かりやすいかも知れない.

ヘメロカリスは分類上はワスレグサ科の植物であるけれど,日本人に「忘れ草」として親しまれているのはワスレグサ科の植物一般をさすのでなく,万葉の時代から日本にあった,中国原産のヤブカンゾウのことをいうみたい.


オレンジのノカンゾウの花の後には,紫のクコ(枸杞)の花.

通勤路のノカンゾウ,2017年9月14日
通勤路のクコ,2017年9月14日

クコは花(色)を見て分かるようにナス科の植物.

通勤路のノカンゾウ,2017年9月14日
通勤路のクコ,2017年9月14日

ヘメロカリス(萱草)が,ワスレグサ(忘れ草)という呼び名に反して一度見たら忘れられないくらい派手でインパクトのある大きな花であるのに対して,クコはシックで小さく美しい花で小さなナス色の実をつける.

一人の女と二人の男

このブログは,

2017/7/23 勿忘草と忘れ草

2017/6/14 最も美しい薔薇

に関する補足として「花と記憶」に関する個人的なメモとして書いています.


『伊勢物語』第二十一段「忘れ草」

むかし,男と女がとても深く思いを交わして暮らしていました.

ところが些細なことで,女は男との仲が嫌になって,こんな歌をかきつけて家を出て行きました.

出でていなば 心軽しと 言ひやせむ

世の有様を 人は知らねば

(私が家を出て行くのを世間の人は軽々しい振る舞いというでしょう.夫婦の間のことを,世間の人は知らないので)

男は訳が分からず,どうしてこのような事になったのかと,ひどく泣いて(決断力のある女,優柔不断で泣いてばかりいる男,という昔物語によくあるパターン),門まで出て探しに行こうと思ったのですが,どこを探してよいかも分からないので,このような歌を詠みました.

思う甲斐 なき世なりけり 年月を

あだに契りて われや住まひし

(思う甲斐もない男女の仲だった.長い年月をいい加減な気持ちで契り交わして暮らしてきたのだろうか)

女はそれなりの理由があって家を出て行ったのですが,その後で後悔します.また,男が,きっと自分のことを探し回ると思っていたのに,冷静に探し回らなかったのは誤算でもあり,女をいらつかせます(男の自分には分からなかったが,下記,参考図書の編者の解説による).

ずいぶん時間がたって,女は我慢しきれなくなって,こんな歌を男に送りました.

今はとて 忘るる草の 種をだに

人の心に 播かせずもがな

(今はもう,せめて忘れ草の種だけでも,あなたの心には播かせたくないのです.忘れ草を植えて,私のことを忘れないで下さい)

このあと,ふたりはいくつか歌を交わしますが,それぞれに別の相手ができたので,疎遠になってしまった.

[参考: 伊勢物語,坂口由美子編,ビギナーズ・クラシック日本の古典,角川ソフィア文庫]


この話に出てくる忘れ草(萱草)

通勤路のヤブカンゾウ,2017年7月21日
植えると憂いを忘れるという忘れ草,萱草,2017年7月21日

は,「植えると憂いを忘れる」,というので,とくに,苦しい恋の思いを忘れるのに使われたみたいであるけれど,ここでの使い方は,女が「忘れ草を植えないで」=「私のことを忘れないで」=「私のことを勿忘草」というかたちで使っている.

『伊勢物語』は,昔男という主人公を軸に歌物語のかたちで,この物語で中心的な役割を果たす,在原業平の歌だけでなく,当時流行っていたいろんな歌にストーリーをつけて書き綴った短編集で,もちろん,あの『古今集』の夏の部に載せられている,詠み人知らずの,今も,昔もみんな大好き,大人気の歌

五月待つ 花橘の 香を嗅げば

昔の人の 袖の香ぞする

(毎年(旧暦)5月になるのを待って咲く橘の花の香りを嗅ぐと,この香りを袖にたきしめていた,別れた妻のことを思い出します)

も,第六十段「花橘」に,「一人の女と二人の男の話」として取り入れられているけれど,この素晴らしい歌の逸話としては,好きになれない.

古今集の歌は,橘の花の香り,つまり柑橘(かんきつ)系の

  • 柑(かん)が蜜柑(みかん)の「甘い」香り
  • 橘(きつ)が橘(たちばな)の「酸っぱい」香り

というので,橘の花の香りは嗅いだことがないけれど,多分レモン(フランス語でシトラス)香の薔薇

マダム アルディー,2017年6月4日
レモン香の素晴らしいオールドローズ,マダム アルディー,2017年6月4日

のような香りがするのではないかと思うけれど,この花の香りで,別れた妻のことを毎年初夏になると想い出すという,香りに連ねられた記憶の切ない歌であり,「なぜ別れたのか」,「誰が詠んだのか」分からないからこそ,『伊勢物語』の第六十段と違って,読む人の想像力をかきたてて素晴らしいのだと思う.


『伊勢物語』第六十段「花橘」

昔ある男がいました.

この男は,宮仕えに忙しく,妻に細やかな愛情をかけてあげることができなかったので,妻は,「あなたのことを誠実に愛します」,という男について家を出て行きました.

さて,この男はその後出世して,朝廷の使いとして,大分県の宇佐八幡宮に遣わされることになりましたが,その途中で,かつての自分の妻が,中央から派遣される役人をもてなす地方役人の妻になっていることを知り,この役人に,「奧さんに酌をさせなさい,さもないと,酒は飲みませんよ」と言ったので,地方役人はしようがなしに自分の妻に酌をさせました.

かつての妻が酌をするために腕を差し出したときに,昔と同じ,橘の花の香りが袖からしました.そこで,男は,酒の肴の蜜柑をとって,

五月待つ 花橘の 香を嗅げば

昔の人の 袖の香ぞする

(毎年(旧暦)5月になるのを待って咲く橘の花の香りを嗅ぐと,この香りを袖にたきしめていた,別れた妻のことを思い出します)

と詠んだので,女はこのときに初めて,この男がかつての自分の夫であることを知り,その後いろいろと考えるところがあって,新しい夫と別れて,尼になり山に暮らしました.

[この段に関しては,初夏に咲く橘の花の香りと,この話の冬の,酒の肴の蜜柑の香りを混同されている解釈ばかりなので,別れた妻が酌をするときに,昔と同じ橘の花の「袖の香り」がしたという,自分なりの解釈で訳しました]


  • かつての妻の新しい生活をそっと見守るのでなくぶち壊す嫌な男と
  • 男の世俗的な成功に価値をおく嫌な女と
  • 何が何だか分からないうちに妻が尼になった,誠実だけれど世俗的な成功はできなかった,気の毒な男

の話で,もとの和歌が台無し.

まあこういうのが,世の中(男女の仲)というのでしょうけれど,

都忘れ,再考

『都忘れ』の名前の由来になった,順徳帝が見たミヤマヨメナ,

ミヤマヨメナ,2017年7月19日
ミヤマヨメナ,2017年7月19日
  1. 帝が京を離れる前,京の庭で見た
  2. 帝が京を離れた後,隠岐の庭で見た

という 2つの説があって,どちらかというと 2.の説の方が有力な感じなのだけれど,「紫という色は京のシンボルカラー」ということなので,もし,2.の説だと,紫色の都忘れの花を見るたびに,逆に京のことを思い出して,「都忘れ」でなくて,「都思い出し」になってしまうので,1.の説の,京を離れる前に見て,「忘れ草」のように,「都を忘れる」決意をしたという方が正しいような気がして,

そうすると,花言葉の「別れ」とも合うような気がした.

けれど,さらに,考えたら,京の生活そのものは,忘れたいような悲しいものでも,嫌なものでもなく,むしろ楽しい想い出のはずで,隠岐の庭で,紫に咲く美しい花を見て,京の生活(都)を思い出して,しばし「現在の境遇を忘れた」というのが正しいのかも知れない.

そうすると,花言葉の「しばしの憩い」というのともよく合うような気がする.

今日のミヤマユキナ.

ミヤマヨメナ,2017年7月24日
ミヤマヨメナ,2017年7月24日

(夕べ降った雨で泥が跳ねているけれど,花弁がスリムになって伸びた?)

勿忘草と忘れ草

通勤路脇のミヤマヨメナ(深山嫁菜,野春菊).

素晴らしいブルーの花色.

ミヤマヨメナ,2017年7月13日
ミヤマヨメナ,2017年7月13日
ミヤマヨメナ,2017年7月19日
ミヤマヨメナ,2017年7月19日

(ミヤマヨメナの開花時期,6月末までとなっていて時期的に?だけれど,たぶんミヤマヨメナのはず)

この花の素敵なところは,初夏に爽やかなライトブルーの花色だけでなくて,後に『都忘れ』という素晴らしい名前の園芸植物(花言葉「別れ」,「しばしの憩い」)になる有名なストーリーがあって,

承久の乱に敗れて,佐渡へ島流となった順徳帝は、

  1. 草でぼうぼうの佐渡の庭に 一茎の野菊が 紫色に咲いているのを見つけ、 紫といえば京の都を代表する 色だが,都のことが「 忘れられる」かもしれない。 お前の名を今日から 『都忘れ』 と呼び,都のことを忘れることにしようと、命名したという説と,
  2. 京を去るときに,この花を目にとめ,都を忘れることにしよう,としてこの名前をつけた

という2つの説があり,ミヤマヨメナが隠岐の庭で咲いていたのと,京の庭で咲いていた,のの2通りの解釈があるけれど,どちらも,花を見て都を「忘れることにしよう」という決意を表していて,日本的な感性.

西洋では,ワスレナグサ(勿忘草)

ワスレナグサ,2012年6月1日
ワスレナグサ,2012年6月1日

のように「忘れること勿れ」となるので,同じ初夏に咲くブルーの花でも,花の持つ意味が違う.


日本には昔から「忘れ草」とよばれている野草,ヤブカンゾウ(藪萱草,萱草=忘れ草)があって,そのオレンジのやや大味な花が,今,通勤路でも

通勤路のヤブカンゾウ,2017年7月21日
通勤路のヤブカンゾウ,2017年7月21日

自宅前の堤防でも

堤防のヤブカンゾウ,2017年7月17日
堤防のヤブカンゾウ,2017年7月17日

咲いている.

忘れ草を詠んだ歌は『万葉集』からたくさんあるけれど,たとえば,

『伊勢物語』二十一段「忘れ草」

(ある日突然,「夫婦の間のことを世間の人は知らないので,軽々しいふるまいと非難するでしょうが」と歌を詠んで,他の男と家を出て行った妻が,時がたってから後悔して,未練がましく別れた夫に送った歌)

今はとて 忘るる草の 種をだに 人の心に まかせずもがな

(今はもう,せめて忘れ草の種だけでも,あなたの心には播かせたくないのです=忘れ草を植えて,私のことを忘れたりしないで下さい)

[参考: 伊勢物語,坂口由美子編,ビギナーズ・クラシック日本の古典,角川ソフィア文庫]

最も美しい白薔薇

イングリッシュローズに出会って迷い込んだ薔薇の世界だけれど,イングリッシュローズ育てれば育てるほど,オールドローズ

マダム・ピエール・オジェ,2017年5月24日
マダム・ピエール・オジェ,2017年5月24日
ヴァリエガータ・ディ・ボローニャ,2017年6月4日
ヴァリエガータ・ディ・ボローニャ,2017年6月4日

に惹かれていく.

イングリッシュローズは毎年新品種でるけれど新品種には今は興味なくて,最近買ったのは,たまたま2つとも1991年に発表された,エブリン

ジ・アレンウィック・ローズ/ エヴリン,2017年6月4日
ジ・アレンウィック・ローズ/ エヴリン/ エヴリン/ チャールズ・レニー・マッキントッシュ,2017年6月4日

とピルグリム.

ピルグリム,2017年6月3日
ピルグリム,2017年6月3日

イングリッシュローズへの熱は完全に冷めたけれど,この1月に,「最も美しい白薔薇のひとつ」といわれるマダム・アルディー(Mme. Hardy)注文して,連休始めに届いたの植えつけていたのが開花していた.

マダム アルディー,2017年6月4日
マダム・アルディー,2017年6月4日

マダム・アルディーが美しい理由として,純白(開花初期はうすいピンク)で例えようもない美しく整った花容にグリーンアイが入ること.

今回の花はまだまだ完成されていないけれど,それでもしっかりクォーターロゼット咲きになっていて,系統的にはダマスクだけれど,ダマスク香でなく,さわやかな柑橘系のベースに混じるレモン香が素晴らしい.

柑橘系の香りで,過去の記憶を呼び戻すのは,(読んだことはないけれど)プルーストの紅茶にひたしたマドレーヌ(ティー香かマドレーヌに入れたオレンジピクルスの香り?)から,過去の記憶がよみがえる『失われた時を求めて』が有名だけれど,

五月待つ 花橘の 香を嗅げば 昔の人の 袖の香ぞする

(毎年(旧暦)5月になるのを待って咲く橘の花の香りを嗅ぐと,この香りを袖にたきしめていた,別れた妻のことを思い出します)

という,『古今集』の夏の部に,詠み人知らず,として収められている,切ない想いのこもった,昔から大人気の歌を思いだした.

この歌では,二度使われている「香り」という言葉が,現在と,別れた妻と暮らした過去と,毎年やってくる夏の未来,をつないでいる.

美しい白花は,薔薇を愛するひとにはあまり意味のない「殿堂入り」のアイスバーグがうちにもあるけれど,香りが微かで,爽やかなレモン香はないし,花弁の数の少ない半八重の花型にはあっているけれど,グリーンアイもない.

実はわが家には,グリーンアイの入るオールドローズがひとつあるけれど,

トリコロール・ドゥ・フランドル,2015年5月30日
トリコロール・ドゥ・フランドル,2015年5月30日

こちらの場合は,白花でないので,少しうるさい感じで,スノードロップもそうだけれど,白花は最もシンプルな白と緑のコントラストが,エレガンスを際立たせると思う.

マダム・アルディーのグリーンアイは,今ははっきりしていないけれど,大苗でお迎えしてまだ1月なので,今後(といっても早くて1年先だけれど)に期待.

ミツバツツジとカタクリ

2009年5月6日に庭にお迎えしたミツバツツジ.

適当な植え場所見つからず,庭の中を転々としたけれど,一昨年梅の木の株元に植え替えて,昨年は少しの花付きだった.

ミツバツツジ,2016年4月30日
ミツバツツジ,2016年4月30日

たくさん園芸品種があるツツジだけれど,山でよく自生しているミツバツツジの花色が一番好き.

去年開花後に,植え場所を,より陽あたりの良い堤防側に少し移動し,今年はこれまでで最も花付きが良いけれど

ミツバツツジ,2017年5月3日
ミツバツツジ,2017年5月3日

花のある分,去年のように葉が展開し始めていないのが少し心配.

ミツバツツジと同じように,山で出会って,それから長い歳月がたって,庭をもつようになって,昔会ったときの美しさが忘れられなくて,探してお迎えしたけれど消滅した,スプリング・エフェメラルのカタクリ.

山法師の株元がいい感じ(ぷち林床)なので,

ヤマボウシの株元,2017年4月30日
ヤマボウシの株元,2017年4月30日

できれば庭にお迎えして再挑戦したい.

手に取るな やはり野に置け 蓮華草

というので

庭に取り入れるな やはり山に置け カタクリとミツバツツジ

なのかも知れないけれど.