環境保全区域で家を建てるには(3)

仙台市における環境保全区域は

「広瀬川の流水域及びこれと一体をなして良好な自然的環境を形成していると認められる区域」

図1 自然崖を形成した広い河床を流れる清流に周囲の緑が映える広瀬川の景観(Google Earthより)
図1 自然崖を形成した広い河床を流れる清流に周囲の緑が映える広瀬川の環境保全区域(Google Earthより)

と定義されている(広瀬川の清流を守る条例第8条第2項).

環境保全区域では一定の割合(保全率)以上の土地を空地(保全用地)

図1 保全用地とは(条例環境保全区域のあらまし,2018年6月版をもとに作成)
図2 保全用地とは(広瀬川の清流を守る条例,環境保全区域のあらまし,2018年6月版をもとに作成)

として,土のままで植物が植わっているか,すぐに植えられる状態で残す必要があり,建築物や工作物の築造に制限がある.

図2 環境保全区域とそうでない区域の違い
図2 環境保全区域とそうでない区域の違い(広瀬川の清流を守る条例,環境保全区域のあらまし,2018年6月版をもとに作成)

保全用地のことを考えるうえで樹木の役割がとても大切なのでこのことについてもう少し見てみましょう.

土地ができたばかりのときは草木が1本もない裸地の状態で,この状態(図3左)を基準に考える.

時間がたつと土地は草原となり,やがて樹木が生長した土地(図3中)となる.

植物は細胞そのものに水を溜めることができるだけでなく,葉や根を展開した樹木は巨大なスポンジとなり裸地に比べて格段の「保水力」がある.また,深く広く張った根は土地の「透水力」を高め,雨水は地中深く浸透して洪水の被害を小さくするとともに,根から吸い上げられた水は光合成により空気中の「炭酸ガスを吸収」し「酸素を放出」し,大気汚染や地球温暖化に対する極めて効率的な対策となる.

樹木の根は保水力を向上させるだけでなく,地滑りを防ぎ,根から吸い上げた水が葉から蒸散することで,樹影による効果に加えて,さらに地温を下げる.

植物の育った緑の土地は,人のストレスをやわらげ,病気からの回復を早めるだけでなく,多種多様な動物が暮らすようになり,生物の多様性は,病原性の細菌の繁殖や感染症,伝染病の抑制につながる.

しかしながら,手つかずの自然もやがて,人間によって開発され,自然環境を残した環境保全区域以外では,建築物や工作物など人工物に置き換わる都市化の波が押し寄せる(図3右).

都市化した人間の暮らしは大量の炭酸ガスを放出し,コンクリートやアスファルトで固められた人工地盤は,地温の上昇によるヒートアイランド現象により,さらなる炭酸ガスの放出につながり,地球温暖化による気候変動での豪雨災害をもたらし,保水力・透水力を失った人工地盤は異常気象による洪水被害を大きくさせるだけでなく,内地浸水など人工的な下水設備の限界による豪雨災害や地滑りなどにより被害を甚大なものとする.

図3.土地の変化と自然環境(裸地,保全用地,都市化のイラストは,広瀬川の清流を守る条例,環境保全区域のあらまし,2018年6月版のものをもとに作成)
図3.土地の変化と自然環境(裸地,保全用地,都市化のイラストは,広瀬川の清流を守る条例,環境保全区域のあらまし,2018年6月版のものをもとに作成)

都市化による人口の集中は,過密な生活によるストレスの増大だけでなく,大気汚染や病原性の細菌,感染症の蔓延をもたらし,パリ協定を離脱したトランプ元大統領のアメリカやアマゾンを乱開発して異常気象に見舞われているブラジルが,コロナ感染症者数の世界でのトップを占め,東京,大阪,愛知といった大都市が緊急事態宣言になるのも,人口が多いだけでなく自然環境がなく多様な生物が暮らす樹木をなくしたからなのかも知れません.

大都市は良好な交通網,医療機関,文化設備,娯楽設備などのインフラをもっているけれど,18世紀には,すでに一部の都市計画者たちは,もっとも大切な都市のインフラの一つは樹木であり,市民の健康な暮らしを守るには,自然環境,とりわけ樹木のある自然環境の保護は決定的に重要であることに気付きました(末尾のYoutube参照).

仙台では,今から約400年前の江戸時代,仙台藩祖伊達政宗公が,家臣たちに,屋敷内には飢餓に備えて,栗・梅・柿などの実のなる木を,敷地境界には杉を植えるように奨め,こうしてできた屋敷林と広瀬川の河畔や青葉山の緑が一体となって,街全体が緑に包まれた「杜の都」となりました

1945年の仙台空襲で,まちの緑は焼けてなくなってしまいましたが,その後の復興により緑が回復しましたが,

1974年に「都市化の進展は著しく,このまま放置すれば広瀬川の清流は奪い去られようとしている。この市民共有の財産である美しい広瀬川の清流を保全して次代に引き継ぐことは,われわれに課せられた重大な責務である。」

として,「広瀬川の清流を守る条例」を制定し現在にいたるのですが,いま再び広瀬川の自然環境が,宮城県知事の作った,これまで何十年にもわたって保全されてきた樹木を伐採し,アスファルトで地面全体を固めて作った大規模(9000平方メートル以上)人工芝グラウンドにより大きく損ねられようとしているのです.


この記事は,下記のTED-EdのYoutube動画(日本語字幕あり)を参考に書きました.

木を全て切り倒した都市に何が起こったか

環境保全区域で家を建てるには:番外編(2)

宮城第一高第二グラウンドの違法性について指摘しておりますが,伐採に関して2021/02/03付けで再度,違法でないという回答が来ましたので下記のように再度違法性を指摘しました.


[仙台市長]伐採された樹木につきましては、伐採した本数と同数の代替樹木が第二種環境保全区域内に植栽されており、広瀬川の清流を守る条例に基づく自然的環境の回復を図る措置が講じられております。


当該建築敷地(図2青枠内)においては,環境保全区域の川岸側に接した当該建築敷地における自然的環境の回復を図る,

  • 代替樹の植樹
  • 生垣の設置
  • 壁面緑化
  • 屋上緑化

等の措置は一切講じられておりません(図1).

以前の税務大学校の校舎のように,条例に従って川岸と反対の道路側に設置すべき建築物であるトイレと倉庫を,樹木(下の画像参照)を違法に伐採して更地化して保全緑地内に設置して環境破壊,2020年11月28日
図1 第2種環境保全区域において保全されてきた樹木を伐採し築造されたトイレと倉庫.自然的環境を回復する措置は一切講じられていない.2020年11月28日

また,グラウンド敷地の第2種環境保全区域ほぼ全面をアスファルト舗装して人工芝を施工,または,上記建築物等工作物を設置しており,保全率は5%程度で規定の24%にとおく及ばない大規模環境破壊の違法グラウンドを造成して(図2)

  • アスファルト舗装基盤の人工芝グラウンドは工作物ではない
  • 高さ5m以下の塀は工作物ではない
  • 高さ15m以下の塀は鉄柱(+防球ネット)であり工作物でない(次項参照)
  • 高さ5m超の照明灯は公共のためのもので工作物ではない(次項参照)

これらは市では工作物としないので,工作物に係わる敷地から除外でき,保全率の規定は,市の指定した工作物のみに関する敷地面積に対して規定される,として当該地区の環境破壊を放置しているのはすでに指摘したとおりです。

図5 宮城県が行ったグラウンド造成工事.グラウンド南東部の樹高10m以上の樹木(図1参照)を建築物を建てることで伐採し,代替樹は南側の川沿いの既存保全用地中央部に5本,東側に2本,樹高2m程度の樹木を植樹したが,図の灰色で示す従来土のグラウンドとして保全されてきた用地(図4)ほぼ全面をアスファルトで舗装して「植物が育たない不毛の土地」にし,第2種環境保全区域内(図中の黒線より南側)に関しては保全率6%以下で保全率の最低基準の24%に大幅に不足した「違法グラウンド」を造成した.(仙台市に情報開示を請求して得た敷地構成図をGoogle Mapの衛星写真に重ねて作成)
図2 宮城第一高第二グラウンド.土のグラウンドとして保全されてきたグラウンド用地ほぼ全面をアスファルトで舗装し,最低基準の24%に大幅に不足した保全率5%の「人工芝グラウンド」(画像右隣の国家公務員宿舎は保全率60%で宮城県の環境破壊の悪質性が際立つ,仙台市に情報開示を請求して得た敷地構成図をGoogle Mapの衛星写真に重ねて作成)

[仙台市長]防球ネットにつきましては125日に回答致しましたとおりであり、


指摘したもの(図3)と同等のものは,「野球場」によく設置されておりますが「防球ネット」とは呼ばず「フェンス(塀)」とよんでおります.

塀,柵(図3後方に見える2本の鉄柱間に鉄パイプをわたしたもの),鉄柱等は,広瀬川の清流を守る条例第9条の規定により許可が必要な工作物であり,許可なく築造すると条例第19条の規定により5万円以下の罰金に処せられます.

また,(支柱により土地に定着した)ネットそのものは,広瀬川に生育する野鳥を殺傷する自然的環境に悪影響を及ぼす危険な「工作物」にあたるため,第2種環境保全区域にむやみに設置することはできず,野鳥等の動物がネットに絡まり傷ついたり死亡した場合は,野生動物にとって危険なネットを許可なく大規模に環境保全区域に設置したものは,「動物の愛護及び管理に関する法律」の動物虐待罪により刑事責任を問われる場合があります.

図5 グラウンド東西北面を取り囲む柵(高さ10m超)と照明搭(高さ5m超),2021/01/11撮影
図3 仙台市が「防球ネット」と呼んでいる,グラウンド敷地東西北面を取り囲むフェンス(高さ10m超)とグランド利用者でなく「公共のため」と言っている周辺住宅への光漏れ防止フードつきの照明搭(高さ5m超),2021/01/11撮影

[仙台市長]照明灯につきましては、条例において公共の用に供するものであることから許可不要となります。


グラウンド西側に3ヶ所,北側に3ヶ所設置されております高さ5236 mmの照明灯(岩崎電気 E50059/NSAN9)に関しましては,図4に拡大してお見せするように,公共スペース(道路・住宅側)に光が漏れないように「遮光板」が設けられており,公共の用に供するものではなく,また,公共の用に供するものであったとしても,広瀬川の清流を守る条例第9条の規定により,災害時の応急処置等で行われる場合以外は,築造にあたって許可が必要であり,違反すると条例第19条の規定により,5万円以下の罰金に処せられます.

グラウンド敷地内に設置された照明灯,公共スペース側に光が漏れないように遮光板が設けられている
図4 グラウンド敷地内に設置された照明灯,公共スペース側に光が漏れないように遮光板が設けられている.また照明灯の後ろに見える2本の鉄柱間にパイプをわたしたものは「柵」にあたる.