環境保全区域で家を建てるには:番外編

宮城第一高第二グラウンドの保全率違反を仙台市長に告発したところ,1月25日付けで,


「送信いただいた写真の防球ネットは、広瀬川の清流を守る条例により高さが15m以下の鉄筋コンクリート造の柱、鉄柱、木柱その他これらに類する工作物であり、許可不要となります。」

図5 グラウンド東西北面を取り囲む柵(高さ10m超)と照明搭(高さ5m超),2021/01/11撮影
仙台市長が「フェンス(塀)」でなく「鉄柱」であるとしている(ネットの部分はお見えにならないようである)工作物,2021/01/11撮影

との回答が来ていましたので,以下のように,違法性を改めて指摘しました:

1.「塀」でなく「鉄柱」であるとされるなら,フェンス(塀)としての機能をもたらす「ネット」を取り外させてください.

「ネット」は,グラウンド利用者にとっては,(1)敷地外からの侵入を防ぎ,(2)敷地内からボール等が敷地外に出て行くのを防ぐ,「壁」として機能するメリットがありますが,「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律施行規則」で禁止されている「かすみ網」と同じように,広瀬川に生息している貴重な野鳥の生命を奪います.

また,実際に野鳥等の動物がネットに絡まり傷ついたり死亡した場合は,野生動物にとって危険なネットを許可なく大規模に環境保全区域に設置した宮城県知事は,「動物の愛護及び管理に関する法律」の動物虐待罪により刑事責任を問われる場合があります.

2.画像奥に見えますように,隣合うフェンスの頂部間10ヶ所以上に鉄パイプ製の「梁」が渡され,隣合う鉄柱間を固定しておりますが,こちらも(写真の工作物が)「塀」もしくは「柵」でなく「鉄柱」であるとされるなら撤去させてください.

3.鉄柱,塀,柵などは,広瀬川の清流を守る条例施行規則第12条第一号に掲げられている,「工作物」であり,条例第9条にあるように,

  • 非常災害時の応急修理,または
  • 通常の管理行為その他の行為のうち自然的環境の保全に支障を及ぼす恐れがないもの

以外はあらかじめ市長の許可を受けなければならない条例第9条)と定められておりますので,写真の工作物の新築に関しては,規模(高さ)の如何によらず「許可不要」でなく「許可必要(宮城県の場合は通知必要)」にあたると思われます.


仙台市長からの反論が来ましたら,あらためて番外編(2)として続きます

環境保全区域で家を建てるには(2)

環境保全区域で家を建てる場合,特に外構において気をつけるべきポイントについて,前回の「保全率」に引き続き,「樹木の伐採」について,宮城県知事が広瀬川の環境保全区域内(図1)で行ったグラウンド造成工事における伐採の実例とともに紹介します.

図1 自然崖を形成した広い河床を流れる清流に周囲の緑が映える広瀬川の景観(Google Earthより)
図1 宮城県知事が違法と思われる樹木の伐採を行った(画像中央部)広瀬川第二種環境保全区域の自然.河川沿いの樹木は広瀬川の自然環境を構成する重要な要素であるので,河川沿いの土地には,保全用地を最低でも2m川岸沿いにとらなければない制限,川岸沿いの塀に関しては事前に設置の許可を得なければならない制限の他に,樹木の伐採に関しても厳しい制限があり,伐採を許可されても,「(周囲の自然環境を回復するための)代替樹の植樹等」の保全処置を行わなければならない(画像はGoogle Earthより)

まず,「保全率」の復習から.

「保全率」とは,工作物(建築物および建築物以外の工作物)に係わる「敷地」に対する「保全用地」の割合をいいます.

「保全用地」とは「自然的環境の保全のために確保されている土地」(条例施行規則第14条第1項一ロ(1))のことで,裸地(らち,草木が1本もない土地)の他に植物が植わっているか(すぐに)植えられる状態の土地をいいます(図2).

図2 保全用地とは(条例環境保全区域のあらまし,2018年6月版をもとに作成)
図2 保全用地とは(広瀬川の清流を守る条例,環境保全区域のあらまし(2018年6月版)をもとに作成)

土地が出来たばかりのときは裸地(図2左)の状態ですが,時間とともに,草原,樹木の生えた土地(図2右)となります.

開発が制限されている環境保全区域で家を建てるには,

  1. 環境保全の基本である「保全率」の規定をみたす(図3 空地(保全用地)のルール)だけでなく,
  2. 工作物(建築物や,駐車場や通路などの建築物以外の工作物)の築造のために,「樹木の伐採の許可」を得る必要があります.

(この他にも工作物の色,高さ等の規定もあります)

仙台市,環境保全地域による許可基準のあらまし(旧版の記述).2019年11月に,この,○土のままで30%以上確保,×(舗装は不可),の記述を削除
図3 広瀬川の清流を守る条例,環境保全区域のあらまし(2018年6月版)より.

伐採の許可基準は,土地の状況(河川に接している土地かそうでないか,など)や,環境保全区域によって異なります.


それでは,宮城県知事が 2020年度に行った宮城第一高第二グラウンド造成工事における伐採に関して,工事前(図4)後(図5)の土地の変化から見てみましょう.

図4 税務大学時代の敷地.校舎は第2種環境保全区域外の北側敷地内に建築して第2種環境保全地域に関しては保全率はほぼ100%.
図4 宮城県がグラウンド造成工事を行う前.第2種環境保全区域内(ピンクの帯の内側)に関しては保全率100%.グラウンド南東部に15m以上の高木が多数ある(図1参照).(仙台市都市計画情報インターネット提供サービスの地図をGoogle Mapの衛星写真に重ねて作成)
図5 宮城県が行ったグラウンド造成工事.グラウンド南東部の樹高10m以上の樹木(図1参照)を建築物を建てることで伐採し,代替樹は南側の川沿いの既存保全用地中央部に5本,東側に2本,樹高2m程度の樹木を植樹したが,図の灰色で示す従来土のグラウンドとして保全されてきた用地(図4)ほぼ全面をアスファルトで舗装して「植物が育たない不毛の土地」にし,第2種環境保全区域内(図中の黒線より南側)に関しては保全率6%以下で保全率の最低基準の24%に大幅に不足した「違法グラウンド」を造成した.(仙台市に情報開示を請求して得た敷地構成図をGoogle Mapの衛星写真に重ねて作成)
図5 宮城県が行ったグラウンド造成工事.グラウンド南東部の樹高10m以上の樹木(図1参照)を建築物を建てることで伐採し,代替樹は南側の川沿いの既存保全用地中央部に5本,東側に2本,樹高2m程度の樹木を植樹したが,図の灰色で示す従来土のグラウンドとして保全されてきた用地(図4)ほぼ全面をアスファルトで舗装して「植物が育たない不毛の土地」にし,第2種環境保全区域内(図中の黒線より南側)に関しては保全率6%以下で保全率の最低基準の24%に大幅に不足した「違法グラウンド」を造成した.(仙台市に情報開示を請求して得た敷地構成図をGoogle Mapの衛星写真に重ねて作成)

人工芝グラウンドを築造するために,グラウンド敷地ほぼ全面をアスファルト舗装したことで,保全率の規定(24%以上)を大幅に満たしていない(6%以下)違法グラウンドであるのはすでに述べたとおりです.

条例では,グラウンド造成工事を行った敷地のうちの,第二種環境保全区域(6581.90㎡)では3m以上の樹高の(伐採面積が10㎡以上の場合は一切の)樹木は許可なく伐採できず,伐採できる条件を条例施行規則第14条第七項で以下のように(図6)定めています.

図3 木竹の伐採が認められる場合(条例施行規則第14条第七項)
図6 木竹の伐採が認められる場合(条例施行規則第14条第七項.二では学術目的で伐採できるとあるが省略)

この規則では,1行目の,ただし書き以下で「市長が土地の利用上やむを得ないと認めれば,伐採できるとあり」やむを得ないと認める場合を条例施行要領等で明文化しているわけでないので,「市長が認めれば何でもあり」,ですが,宮城県や国が申請する場合,市長の「許可」を得るのでなく,(自分で違法行為にあたらない事を確認のうえ)「通知」することになっており,市長の許可の規定は使えなく(条例第9条第2項),伐採を行うには,イ~二の規定に該当するものとして通知する必要があり,イ,ハ,ニは摘要外ですので,宮城県は

ロの赤下線部 「著しい不整形その他の理由により木竹を伐採しなければ土地の有効利用が図れない場合」

を根拠として,図面上自由に設定できる「建築敷地」を「旗竿地」にして「不整形」を理由(環境保全区域外で伐採なく保全率の制限もなく建設できる更地になっている土地を「旗竿地の竿」の狭い通路に設定して建築できないとし,建築するには,環境保全区域の「旗竿地の旗」の部分の樹木を伐採する必要がある)に伐採の通知をしたとみられます.

この件について,「伐採目的で建築物をこれまで保全されてきた保全緑地内に建てて環境破壊した極めて悪質な行為である」と仙台市長に指摘してきましたが,仙台市長は「建築物をどこに建てるかは事業者の自由であり,他に十分な敷地をもっているとしても,それはプライバシーに属することであるので,そちらに建てるようにとは指導しない.「やむを得ない事情がある」とすれば,伐採は認められる」と回答して平行線をたどっておりましたが,条例施行規則を読みなおすと,伐採の条件として,(図6緑下線

代替樹の植樹等の代替措置が講じられていること

となっておりますが,伐採を申請した建築物に関わる敷地(図5青枠内)に代替樹の植樹,生垣の設置,壁面緑化,屋上緑化等の代替措置が全くとられておらず(図7),違法な伐採となると思われます.

以前の税務大学校の校舎のように,条例に従って川岸と反対の道路側に設置すべき建築物であるトイレと倉庫を,樹木(下の画像参照)を違法に伐採して更地化して保全緑地内に設置して環境破壊,2020年11月28日
図7 伐採した後に建設されたトイレと倉庫.壁面緑化,屋上緑化,生垣植樹等の現地の自然的環境を回復する行為は一切行っておらず,伐採に続いて,「さらなる環境破壊」を行って放置している.

注1 変形地(狭小地)の場合は,保全用地が限られており,敷地内に伐採した樹高10m以上の高木になる樹木を植樹できないので,敷地境界全周への「生垣」造成,「壁面緑化」および「屋上緑化」等により保全用地を増大させるとともに緑化面積を補償しなければ自然回復とならない.


条例の抜け穴を探して,違法行為をしようとしても,違法性を指摘されると,刑事罰に問われ,原状回復できない場合は,刑務所に入ることにもなりかねません.

これから環境保全区域で家を建てようとするかたは,法令に対して十分な知識と理解が必要となります。

この「環境保全区域で家を建てるには」に関しては,さらに記事を追加する予定です.

環境保全区域で家を建てるには

家を新築するときやリフォーム,建て替えるとき,通常の土地の場合はハウスメーカーや工務店が建築確認をとって建築基準法に則った家を建ててくれる.

土地が環境保全区域にある場合,良好な自然環境に恵まれているのは素敵なことだけれど,その自然環境を開発から守るために,建築基準法に加えてさまざまな環境に関する法律(条例)の制約をうけ,特に敷地面積が限られている個人住宅の場合,思ったような住宅を建てられない場合も多い.

環境保全に関わるのは家というより,ほとんどが庭(外構)の部分で,外構も含めて大手のハウスメーカーに家の新築を依頼する場合はともかく,通常は必要最低限の外構を家の建築時にハウスメーカーに依頼して行い,後日外構業者に外構の造成を依頼するのが一般的と思われるが,多くの外構業者は環境保護のための法律を熟知しているわけでないので,結果的に違法な外構を造成してしまい施主が刑事罰(罰金,懲役刑)をうける場合がある.

以下仙台市の広瀬川沿いの第二種環境保全区域(図1)

図1 違法人工芝グラウンドが造成される前の宮城第一高第二グラウンド敷地(Google Earthより)
図1 グラウンド造成前の素晴らしい広瀬川河川環境-クリックして拡大してご覧下さい(Google Earthより)

において違法に造成されたと考えられる宮城第一高第二グラウンド(図2)を例に

以前の税務大学校の校舎のように,条例に従って川岸と反対の道路側に設置すべき建築物であるトイレと倉庫を,樹木(下の画像参照)を違法に伐採して更地化して保全緑地内に設置して環境破壊,2020年11月28日
図2 グラウンド造成後.グラウンド敷地全面をアスファルトで舗装して保全率の規定(24%以上)を大幅に満たさない(6%以下)人工芝グラウンドにし,さらに保全されてきた樹木をトイレと倉庫を環境保全区域内に意図的に建設することにより伐採し,数十年間にわたって良好に保全されてきた自然環境(図1)を破壊した,2020年11月28日撮影

公開されている情報および公開を請求した情報をもとに,この工事の問題点を以下の2点(保全率と樹木の伐採)に絞って説明しながら,環境保全区域で家を建て庭を造る場合の注意点を考えたいと思います.


1)保全率について

保全率は敷地に対する保全用地の割合をいい,

保全率 = 保全用地面積/工作物の敷地面積

となります(条例施行規則第14条第1項一ハ(1)).

保全率100%は人の手が入らず,自然の状態が完全に保存されている状態です.

環境保全区域では,用途地域ごとに最低でも守るべき保全率があり,仙台市の場合は160㎡未満の狭小敷地を除くと,

  1. 特別環境保全区域(保全率42%)
  2. 第一種環境保全区域(保全率36~30%)
  3. 第二種環境保全区域(保全率30~24%)

となります.

環境保全区域以外では,保全率0%でも構いません(建ぺい率の基準等は満たす必要がある)(注0)。


注0 仙台市においては条例許可申請の手引き9ページに記載した工作物以外の工作物を築造する場合,それらは「仙台市の定める工作物」でないので敷地面積から除外することができ,例えば,特別環境保全区域で敷地全面をコンクリートで舗装して保全率0%にしても問題ない,ということである(2021年1月7日に仙台市建設局百年の杜推進部に確認済み,ただし,コンクリートの厚さは30 cm以下として下さい,ということである)。


「保全用地」とは「自然的環境の保全のために確保されている土地」(条例施行規則第14条第1項一ロ(1))のことで,裸地(らち)の他に植物が植わっているか(すぐに)植えられる状態の土地をいいます.

一般に,工事を始める前は,更地(人工的に作られた裸地)となっている場合が多いのですが,環境保全区域では樹木の伐採に制限がある場合がほとんどで,更地にするための樹木の伐採が許可されるか,また,許可された場合も,大抵の場合は代替樹の植樹等の自然環境を回復するための措置が義務づけられるので注意が必要です.

「工作物」は「建築物」と「建築物以外の工作物」に分けられます.

「建築物」とは,おおまかには,「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱もしくは壁を有するもの」をさし,建築基準法第2条に明記されているものなどで,建築物に付属する「門」や「塀」なども含まれます.

「建築物以外の工作物」とは,「土地または建築物に定着する工作物のうち建築物以外のもの」をさし,条例施行規則第12条第1項に「門」「塀」「柱」「駐車場」「遊戯施設」等いくつかのものが明記されています(注1).


注1 仙台市は,工作物の範囲を,行政の権限で,条例本文のものより限定することができ,条例手引き9ページに記載の無い,「コンクリート」や「人工芝」は許可を要する工作物ではない,としています)


それでは,図4に示す,宮城県の行った宮城第一高第二グラウンドの造成工事の保全率をみてみましょう.

図4 敷地構成図(仙台市に情報開示を求めた資料をもとに作成)
図4 敷地構成図(仙台市に情報開示を求めた資料をもとに作成)

この敷地における条例の定める工作物(*は仙台市は工作物でない,あるいは,**工作物であるが規模(高さ)によって許可を要する工作物でない,としているもの)は,

  1. *人工芝グラウンドおよびその周囲に設置された*排水溝
  2. トイレ
  3. 倉庫
  4. 塀(グラウンド全周,図5,ただし,仙台市長はこれを「塀」でなく**「鉄柱」としている)
  5. **塀(駐車場敷地北面)
  6. **門
  7. 照明灯
  8. **自動車,原動機付自転車,自転車駐車のための施設
  9. *水飲み場
  10. **埋設管(グラウンド下の暗渠排水管,グラウンド周囲の排水溝から下水への排水管,トイレへおよび水飲み場への上下水道管,トイレの汚水管,照明灯,トイレおよび倉庫への電気配線を通す管)
図5 グラウンド東西北面を取り囲む柵(高さ10m超)と照明搭(高さ5m超),2021/01/11撮影
図5 グラウンド全周を取り囲む塀(高さ10m超),2021/01/11撮影

であるが,工作物の敷地境界塀がグラウンド敷地を規定しており,保全率を考えるうえでは,敷地のうちの第二種環境保全区域の敷地面積6581.90㎡について考えれば良い(注2)ので

保全率 = 保全用地面積/工作物に係わる敷地面積(第二種環境保全区域)=366/6581.90 = 0.0556 = 5.6 %となり,規定の24%の1/4も満たしておらず違法です

(注3)。


注2 本グラウンドでは,

工作物に係わる敷地面積 > 建築敷地面積

であり,建築敷地は工作物敷地に含まれる(建築物も工作物なので,なお,建築物敷地を工作物敷地から除外して別途保全用地を定義することはできない)。建築敷地面積は,建ぺい率を計算するのに用いるもので実体(境界塀など)はなくても良い。

一般の狭小住宅では,

建築敷地面積 > 建築物以外の工作物に係わる敷地面積

なので,工作物に係わる敷地面積に建築敷地面積を使っても問題無い.


注3 条例第9条第2項に,国または地方公共団体が工事を行う場合,「許可」を得る必要はなく,「通知」すれば良いとあるが,これは,好き勝手にできるという意味でなく,国や地方公共団体が工事を行う場合は,仙台市に許可を受けるのでなく,団体自身で許可を受ける要件に達しているか確認したうえで「通知」することとなっているだけで,通知を行った工事が条例で規定されている要件に適合していない場合は,「通知」でなく「犯罪予告」にあたるだけで,許可を得ずに工事を行ったことになると思われる


仙台市長から違法性の指摘に対する回答が来ましたのでに続きます。