環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(3)第9条

1974年9月28日制定された「広瀬川の清流を守る条例」は,かつては,仙台市民にとって憲法のようなものだ,といわれていたようであるが,その理由は格調高い前文から想像することができる:

https://www.city.sendai.jp/hirosegawasose/kurashi/shizen/midori/midori/seryu/documents/jyourei.pdf
広瀬川の清流を守る条例 前文

条例は第1条(趣旨),第2条(市長の責務),第3条(事業者の責務),第4条(市民の責務)と続き,

第9条(環境保全区域における行為の制限)で

条例第9条1項
第9条1項

(1)~(6)に具体的にあげられている行為を行う者は,あらかじめ「市長の許可」を受けなければならない(注1),と規定し


(注1)第9条には,第2項として

第9条2項
第9条2項
 とあり,国の機関又は地方公共団体が開発行為を行う場合,「市長の許可」でなく,「市長への通知」をもって行うよう規定されている。この特別規定の理由は(自分自身も最近ようやく理解したところであるが)明らかである:
1.市長自身が事業者となって開発行為を行う場合,「自分で自分を裁くことはできない」という自然法の大原則があるので,市長は自分自身に対して許可を与えることができない。そこで,事業者である市長が,市長に対して通知を行う形で市長の許可を得ずに工事を行うこととなる。当然ながら,通知内容は,(市長の許可が得られる)広瀬川の清流を守る条例施行規則 第14条(環境保全区域における許可基準)に適合しているものでなければならない(条文の ...前項の規定にかかわらず,...通知しなければならない)。
2.国や県など地方公共団体が開発行為を行う場合,市長は国や県の機関に対して法的には許可を与えることはできる。しかしながら,県や国は行政制度上,市の上位機関にあたり,市は県や国の指導監督下に行政行為を行うのが基本であるから,市長が県知事など上位の行政機関に所属する事業者に許可を与えるのでなく,上位の機関に属する事業者が市長に通知することをもって行うかたちとする。通知内容は,前項1.の(事業者である)市長が市長に通知する場合と同様,条例施行規則第14条の規定に適合している必要がある。
 (以上が第2項で,県や国のような,法的には市長が許可を与えることができる機関に対しても,通知しなければならない,としている公式理由であるが,「衆知と総力を結集し(条例前文)」次世代に対する「重大な責務(責任+義務)」に根ざして制定された条例であるから,今般,宮城第一高校第2グラウンド造成工事で実際に起こったように,市長が県や国の圧力に屈して,迎合して,あるいは共謀して「不正な許可」を与えたり,「許可不要」として実質的に不正な許可を与える事態がくることを想定して,これを防ぐため,県や国など市より上位にある機関に対しては「(市長は)許可を与えない」ので,「市長に(自ら行う開発行為が許可基準に適合していることを)通知するよう」規定しているのである)。くだけて言うと,市長は県や国の事業者の開発行為に「お墨付き」は与えません。結果については「自己責任」でお願いします,ということです。

この第9条の規定に違反した者(市長の許可を受けずに行った者,または市長に条例の規定に適合した通知を行わず(市長の許可を受けず)開発行為を行ったもの)に対し,第13条(中止,原状回復命令)で市長は工事の中止や,原状回復を命ずることができ,第18条(罰則)で,第13条の規定による命令に違反した者を処罰することができる,としており,この条例が単なる憲章的なものでなく,法的な拘束力をもったものであることを示している(末尾の参考文献参照)。

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2024年春,兵庫県知事を巡る混乱を知り,思うところあって,宮城県知事を再告発することにしました。

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本題に入る前に,まず前回までのおさらいを時系列で説明していきます。

1.宮城県は「広瀬川の清流を守る条例」で第二種環境保全区域に指定されている土地(図1,税務大学仙台研修所校跡地)

宮城第一高校第2グラウンド造成時における第二種環境保全区域(ピンクの帯の間の水色の部分,仙台市都市計画情報提供サービスより),仙台研修所は税務大学をさす
図1 宮城第一高校第2グラウンド全体敷地における第二種環境保全区域(ピンクの帯の間の水色の部分,仙台市都市計画情報提供サービスより),税務大学仙台研修所校当時「校舎」は保全区域外(図ピンク帯より上側)に建築されており保全率はほぼ100%。グラウンド(「校庭」)であるから敷地中央部に樹木はないが,グラウンド外周には樹木が良好に保全されていた(図2)

において,宮城第一高校第2グラウンドを造成する際に,グラウンド東側で前所有者である国によって良好な状態で保全されてきた樹木(図2,⇔,⇒)

宮城第一高校第2グラウンド造成前
図2.宮城第一高校第2グラウンド造成によって伐採されたグラウンド東南部にあった樹木(⇔,⇒,Google Earthより)

を伐採する目的で,「樹木の植わっていた場所」に恣意的に旗竿状の「建築物の敷地」と称する土地(図4青枠内)を設定し,この敷地にトイレ,倉庫を建築するには樹木の伐採が不可欠として伐採し,それ以外の土地(図4赤枠内から青枠内の土地を差し引いた土地)においては,条例第9条で規定される市長の許可を必要とする工作物はないとして,市長の許可を得ず(市長に通知せず)に,これまで保全率100%で保全されてきたグラウンド敷地のほぼ全体(96%)をアスファルトで舗装して徹底的に破壊し,プラスチックの人工芝で被覆した上に,緩衝用ゴムチップを散布し,条例の規定に適合しない保全率5%程度の「人工芝グラウンド」を造成し,現在も,広瀬川および太平洋に環境汚染物質である,ゴムチップやマイクロプラスチック(劣化した人工芝破片)を排出し続けている

トイレ,倉庫の建築後数年して建築した更衣室(〇印,Google Earthより)
図3.宮城第一高校第2グラウンド現況。トイレ(画像上のグラウンド境界に見える赤屋根),倉庫(灰青色屋根)の建築をするためやむを得ないとして樹木(図2)を伐採し,税務大学時代保全率100%で保全されてきた校庭(図1)をアスファルト舗装して破壊し,保全率6%に満たないーこのグラウンド用地の保全率は24%,つまり土地の約1/4を,土のままか,植物が植わっている状態の保全用地としなければならない-「人工芝グラウンド」を造成した。-さらに宮城県の行った行為の”悪質性”を示すものとして,グラウンド造成工事完了後,部室棟(図中〇印)を,グラウンド開設当時は駐輪場としていた保全区域外の土地(画像左上角)に増築した(トイレは部室棟に併設できるし,併設しないとしても税務大学当時のように,保全区域外ー図1参照-に設置できる。ハンドボール(orホッケー)コートが不自然に北側(図中左)保全区域外に寄せられている点に注目-サッカーグラウンドと同じ南北位置に設置すれば,トイレ,倉庫は樹木を伐採せず,ハンドボールコート北に十分設置できる。(Google Earthより-ご注意,この画像は2Dの衛星写真をもとに立体再構成して任意の視点からの画像を生成しています。高さ10mのフェンス等は正確には再現されていませんが影は残っています)。宮城第一高校第2グラウンドは,宮城県が仙台市の全面協力のもと,仙台地検の組織的支援(「罪とならず」という理由による不起訴,不起訴できないものについては告発状放置)により現在も広瀬川,太平洋をゴムチップ,マイクロプラスチックで汚染しながら,運用中の宮城県を象徴する違法(と思われる)グラウンドである
宮城第一高第2グラウンド敷地図
図4.仙台市に請求して入手した,宮城県知事が仙台市長に「通知」した文書に添付された,宮城第一高第2グラウンド敷地図。市長の許可が必要な工作物は図中青枠内のトイレ,倉庫のみで,それ以外の赤枠内から青枠内の土地を除いた土地に許可の必要な工作物はないとして,「グラウンド境界塀」,「防球フェンス」,「照明灯」,「人工芝グラウンド」等の工作物を市長の許可を得ずに(市長に通知することなく)設置した(図3)
(なぜ,宮城県が「人工芝グラウンド」を,環境保全区域の自然を原状回復がほぼ不可能な状態になるまで破壊し造成したかについては,次回,「環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(4)人工芝運動」で考察する予定です)。
2.仙台市に宮城第一高校第2グラウンドの違法性を指摘したところ(「環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(1)裏切り」),
樹木の伐採については,土地の「(自作自演の)著しい不整形」(条例施行規則第14条七ロ)を理由とし
保全率については,条例の「工作物に係わる敷地」(図4赤枠内)における「保全用地」の割合ではなく,「宮城県がグラウンド一部に恣意的に設定した建築物の敷地(図4青枠内)」に係わる「保全用地(図4緑)」の割合をさし,この定義では保全率は30%
であるので「環境保全区域内における県の行為は、条例及び施行規則に適合していることを確認しております。」(2020年12月28日付け仙台市よりの回答,整理番号2-2966) なお,
  • 「人工芝グラウンド」については,人工芝は「手引き」で許可必要な工作物のリストにないので,「許可不要」
  • グラウンド外周の「塀」については防球ネットという「鉄柱」であるので「許可不要」
  • 照明灯については,(公共スペースに光が漏れるのを防ぐ遮光板つきであるが)「公共の用に供するもの」なので許可不要だそうである。

ここまで読まれたかたは,

それでは,仙台市の環境保全区域で庭をつくる場合,土地全面を人工芝グラウンドにしたり舗装して駐車場にして保全率0%としても,処罰されない(注2)と思われるかも知れませんが,これは,事業者が宮城県知事(や大手の民間事業者の場合)であるからで,一般市民が,同じことをして,それが仙台市から指摘されれば,原状回復を求められ(条例第13条),従わなければ処罰され(条例第18条)ます。


(注2)ピンだけで土にとめた(簡単に剥がせる=土地に定着しない)人工芝や,(土間コンクリートや舗装のない)土のままの駐車場(土のままであれば土は土地に定着しない,車も人工物であるが土地に定着しないので,条例でいう「工作物」にあたらない)なら違法にならない


3.そこで,市長に代わり,事業者である宮城県知事を条例第9条違反で告発しました(「環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(2)法の番人」)が,

仙台地検は,「罪とならず」という理由で不起訴とし,
検察審査会に申し立てを行いましたが,「不起訴相当」という議決となり撤退しました。

(ここから経緯を簡単に述べながら本題に入ります。途中経過が不要なかたは最後の部分にお進みください)


再告発するにあたり,仙台地検が不起訴とした理由が分かりません。

 詳細は省略しますが,
2021年4月の告発では,告発事実を「条例第9条違反」((市長が許可不要と言ったので)市長の許可を受けずに行った)としましたが,今回は「条例第9条2項違反」(図4の青枠の土地において「通知」をしなかった)で再告発しましたが,「不起訴」となり,審査申し立てを行いましたが,「不起訴相当」となり,

 

不起訴となった理由について,

①条例違反3年の時効である(告発後電話で,工事開始と同時に時効が進行するという見解を言われたので,時効は保全率の基準を満たすように違法工作物が撤去されてから進行する,と内容証明郵便で回答)

条例第9条第2項違反には罰則がない(罰則があるのは第1項違反のみである)

の2点を検討し,引き時かと思いましたが,

①については「高速道路の論理」(注3)で,土地ごとに定められた保全率の規定は,道路交通法による制限速度のようなものである。制限速度を超えて走行する限り時効が進行しないように,保全率の規定に違反する工作物が保全率の規定を満たすまで撤去されない限り時効は進行しない。保全率が制限速度と異なるのは,自然環境は一旦破壊されると,原状回復が非常に困難であるため,事前に市長の許可が必要なだけである。


(注3)高速道路の論理 ファイル共有ソフト開発者が著作権法違反幇助に問われた事件の弁護団がとった論法:ファイル共有ソフトの開発者が著作権法違反幇助に問われるのであれば,高速道路で速度違反をしたら,高速道路を作った人が,速度違反幇助に問われるのか,という論理。法令解釈で,比較的わかりやすい道路交通法のたとえで相手の主張を打ち砕く手法


②については,県知事は市長の許可を受けずに通知によって工事を行ったものであり,市長の許可が得られない(=条例の規定に違反する)行為を行った場合は,通知をしようがしまいが,「市長の許可を得ずに行った者」として処罰される

ということで,告発事実を「条例第9条1項違反」として3度目の告発を行いましたが,当初の「裏冤罪事件」を晴らしてやる,という意気込みは失せ敗北感濃厚でした。

この告発にあたって障害にしかなっていない,広瀬川の清流を守る条例,第9条2項の規定を避けるため,実は,2回目の告発のあと,図4の通知の,建築物の敷地を青枠内の旗竿状の土地としたのであれば,「建築物の敷地」に含まれない,グラウンド境界の建築物にあたる塀は,確認申請を行わずに建築されたことになり,建築基準法第6条違反(注4)であると,して別途告発しました。


(注4)「広瀬川の清流を守る条例」第9条では,事前に「市長の許可」が必要,建築基準法第6条では,事前に「建築主事による確認済証の交付」が必要。事前に許可・確認が必要な点で両者は似ているが,建築基準法第6条には清流条例第9条2項にあたるものはない


建築基準法違反による告発は,地検でも扱いに困った(清流条例第9条2項違反は,8/29付け告発状⇒10/3受理で提出から受理まで35日間建築基準法第6条違反は,9/12付け告発状⇒翌年1/30受理で提出から受理まで140日間で9条違反の4倍かかっている)とみえ放置していたと考えられるが,地検は捜査権があるので,清流条例違反で起訴できないとしても,建築基準法違反で起訴できたはずで,建築基準法で起訴しないのは「幇助罪」にあたると考えている,と清流条例違反不起訴に対する審査申立書に書き添えた(12/18)ところあわてて受理(翌1/30受理)したとみえて,清流条例より建築基準法で追い込むのが良いように思えたけれど,環境を保全して次世代に引き継ぐための保全率の規定と違って,建築基準法は建築時における履行義務を意味し,違法建築物があっても時効は進行すると考えられ,そもそも,通知建築物の敷地(図4青枠内)では,グラウンド外周の建築物「塀」存在しないが,実際のところ,塀は確認申請を行っていて,建築物の敷地はグラウンド全体敷地(図4赤枠内)であり,それを(図4青枠内と)偽って通知」して伐採を行い,保全率の規定もみたしているとしているので,建築基準法違反では起訴できないと諦めていたのであるが,

参考になるかも知れないと思って見ていた,伊東市長の「卒業証書」をめぐる問題で,「偽卒業証書」...「有印私文書偽造」...とやっていて,「チラ見せ」は(虚偽私文書)行使にならない...

と,ここに来て,なんで今まで気づかなかったのと思ったけれど,

告発事実

被告発人は,宮城第一高校第2グラウンドを事業者として造成する際,広瀬川の清流を守る条例で定められた環境保全のための保全率および伐採に関する規制から免れるため,内容虚偽の文書および図画(図4参照)を作成して仙台市長に通知し,条例の規定に違反するグラウンドを造成した(刑法第156条「虚偽公文書作成罪」,刑法第158条1項「虚偽公文書行使罪」)。

で2025年仙台市長選の日,告発しました(注5)。


(注5)自分として,「広瀬川の清流を守る条例」第9条違反での告発にこだわっていたので,虚偽公文書(図画)の写し(図4)を手元にもっていたのに対応が遅すぎた。

結局のところ,第9条第2項の規定がネックになって身動きとれず,条例改正しかない,地検の(裏弁護人としての)不正な解釈を許す,こんな条文(第9条→第13条→第18条)作った方が悪い,と思っていたのであるが,虚偽公文書「行使」罪というゲームチェンジャーが出てきて,結果的に清流条例第9条第2項の「通知しなければならない(=行使しなければならない)の規定が,建築基準法の建築物の定義(法2条1号),敷地の定義(同施行令1条1号)(それぞれ保全率,伐採の規定に対応*)とともに,とどめを刺してくれたのである(起訴された場合)。

*建築基準法違反で行った告発状の容疑事実は以下のとおり,

  1. トイレ,倉庫と同時に施行した門および塀は建築物であり(法2条1号),敷地は「一の建築物又は用途上不可分の関係にある二以上の建築物のある一団の土地」(施行令1条1号)と定義されているので,敷地に含まれていない門および塀は違法建築物である
  2. 「一団の土地」(施行令1条1号)である敷地を証拠資料1の図(図4参照)の青枠内とすると,グラウンド利用者はグラウンドから直接トイレを利用できず,狭い通路では大型のグラウンド備品を倉庫に収納できない。
  3. 「広瀬川の清流を守る条例」では,伐採を行った場合,その代替樹を敷地内に植樹する必要があるが,被告発人らは敷地とは別のグラウンド南端川沿いに植樹している

今回の虚偽公文書作成・行使の告発が,建築基準法違反の告発と同様に,仙台地検に「放置」され,時効(7年)となる恐れがあり,メディアは情報提供しても一切とりあげないので,これら一連の記事をブログとして記録しています。

「環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか」ー今後の展開は不明です。


[参考文献]本記事を作成するにあたりまして,「河川の環境保護と条例ー清流保全条例を中心に」,竹下賢,環境技術 22, 650-653 (1993) を大変参考にさせていただきました。お礼申し上げます。

環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(2)法の番人

2021年3月4日,仙台地検に告発状を持参しました。

仙台地方検察庁,Wikipediaより
仙台地方検察庁,Wikipediaより

2名の職員に対応していただき,そのうちベテランらしい1名のかたと次のようなやりとりがありました。

(地検)ご職業は?

(私)?

(地検)内部資料にするだけです

(私)〇〇○○です

告発状に目をとおしたあと

(地検)(薄ら笑いを浮かべながら)なぜ住民訴訟にしないのですか?

(私)答えず(注)

(地検)(告発状証拠資料として添付した,グラウンド衛星写真

証拠資料として添付したグラウンド衛星写真,画像右の「保全率60%」は右隣に接する国家公務員宿舎の保全率,地検からは,画像左の民間アパート(保全率0%)を指摘される
告発状証拠資料として添付したグラウンド衛星写真,画像右の「保全率60%」は右隣に接する国家公務員宿舎の保全率,地検からは,画像左の民間アパート(保全率0%)の保全率の規定違反を指摘される(Google Earthの衛星写真に,宮城県が仙台市に通知した開発行為に関わる土地関係の図面を重ねて作成)

を見ながら)「グラウンド周辺には,他にも保全率の規定を満たしていない住宅がある(画像左)。そちらから捜査することになる。」

と,告発状を提出すれば,周辺住民も処罰されるかも,という脅しともとれる発言がありました。


注:告発にあたり,広瀬川の清流を守る条例に関する過去の訴訟を調べていたら次のような訴訟があることが分かりました。

マンション建設取り消し訴訟,facebookより
マンション建設取り消し訴訟,facebookより

この訴訟は,マンション建設反対の住民が,市長の許可を取り消すように訴えたもので,訴訟の結果どうなったかは見つけられなかったのですが,おそらく,住民側が敗訴し,それだけでなく,マンション建設反対運動に対して,業者側が住民側に損害賠償を請求したというような展開になったのではないかと思い,そのような判例があるので,仙台地検が告発状を提出しようとする際,薄ら笑いを浮かべて,「なぜ住民訴訟にしないのか」と言ってきたのではと推察します。

告発状を検察庁に提出すれば「様式に問題がなければ黙って受け取る」と告発の仕方を調べた記事に書かれていたので,仙台地検の異例の対応に驚きで,多分不起訴にするだろうな(出して見た段階で「不起訴」といわれたようなものである)という印象を受けました。


2021年3月17日 告発状を提出後,仙台地検に「なぜ住民訴訟にしないのか」と言われたことについて気になったので再検討し,

告発状を提出すること自体は問題無い:市長に対して,「許可取り消し」をもとめているのではない,市長が「許可不要」と言っているので,県知事が許可をうけずに(通知をせずに)条例の規定に違反する人工芝グラウンドを設置したことを告発しただけ,ですが

上記のマンション建設反対運動の記事に,「訴状は16頁に及ぶもので争点は8点ほどあるのですが,なにぶん複雑でわかりにくいもので,…」とあり,

自分が提出した告発状は証拠資料を含め8頁,争点は2点(保全率の規定違反と伐採の規定違反)であり,伐採の規定に関しては,(保全率の規定に比べると)複雑でわかりにくいので,告発状を一旦取り下げ,争点を保全率の規定違反の1点に絞ったシンプルな告発状を提出することにしました。

2021年4月26日 争点を保全率の規定違反の1点に絞り,証拠写真を告発状に組み込んだA4用紙1枚のみの告発状を提出しました

2022年4月28日 2021年7月9日付けで受理された上記の告発状について,「不起訴」とする処分通知書が届きましたので,不起訴理由について開示するように請求しました。

2022年5月23日 不起訴とした検察官より,(不起訴処分の理由)罪とならず,という告知書

不起訴理由告知書
不起訴理由告知書

が届きました。

検察が,たとえば死刑を求刑して,理由を問い合わせても「罪となる」だけで良いのかということです。不起訴だから良いのではと思われるかも知れませんが,実際、多くの冤罪事件では,最初に「死刑」という結論があって,「罪となる」具体的な理由を探すために捜査を行い,起訴するということが実際に行われているのです。

宮城県知事の広瀬川の清流を守る条例違反被疑事件は「裏冤罪事件」なのです。

仙台地検が不起訴処分に対する「審査申し立て」を妨害するため,具体的な理由を明かさず「罪とならず」といっているのは明らかなので,検察官に「罪とならず」とした具体的な理由を伺いたいと電話しましたが「答えられない」ということでした。

2022年6月22日 検察審査会に

不起訴処分を不当とする理由:

...保全率は,環境保全の基本であり,保全率が規定の24%を大幅に下回る6%以下となる宮城県知事の行った開発行為は極めて悪質な犯罪にあたる...

宮城県知事が県税を使い事業者として行った9000㎡にも及ぶ広大な環境保全区域の土地に関わる保全率の規定に違反する開発行為が,「罪とならず」と具体的な理由を開示することなく免責されるものでない。...

という「審査申立書」を提出しました。

2022年10月6日 検察審査会より,2022年10月5日付けで

議決の趣旨:本件不起訴処分は相当である

議決の理由:...検察官がした不起訴処分の裁定を覆すに足りる証拠がないので,上記趣旨のとおり議決する。

という議決の要旨が届きました。

広瀬川の清流を守る責務のある「仙台市民から選ばれた」審査官が,検察官の裁定を妥当と議決したこと,と

「つまらないからやめろ」

という声が聞こえたので撤退することにしました。

つづく

環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(1)裏切り

前回まで環境保全区域で家を建てる場合,見落としがちな,主に庭に関わる外構工事における制約と基本になる考え方について,お話してきました。

今回から,環境保全区域で実際に違法な庭をつくると事業者(個人の場合も施主=事業者となる)がどのような処罰をうけるかについて,実例をもとにお伝えしていきます。


事例としてとりあげる庭(校庭)は宮城県が仙台市の「広瀬川の清流を守る条例」(1974年9月28日制定)で定める第二種環境保全区域において造成した,宮城第一高校第2(人工芝)グラウンドです。事業者は宮城県知事となります。

2020年4月,宮城県は国から譲り受けた税務大学校跡地(9235㎡)で宮城第一高校第2グラウンドの造成を始めました。

民間開発業者でなく県が学校校庭用地として入手したので,これまで国によって保全率100%で良好に保たれてきた広瀬川自然環境

広瀬川左岸の税務大学校跡地(左手前,Google Earthより)
宮城第一高校第2グラウンド造成前の都市景観と自然が調和する素晴らしい広瀬川自然環境(Google Earthより)

が保たれると安堵していたのですが,ある日川沿いの遊歩道を散策していると,グラウンドのほぼ全面で舗装工事をしています。

写真を撮り忘れたので完成後のグランド写真に生成AI(Gemini 2.5 Flash Image)でロードローラーの画像を合成しています
写真を撮り忘れたので完成後のグランド写真に生成AI(Gemini 2.5 Flash Image)でロードローラーの画像を合成しています

驚いて宮城県の建設局に電話し,グラウンドがあるのは第二種環境保全区域であり,川沿いに幅2mの保全用地を確保したうえで,最低でも敷地全体の24%を保全用地として確保しないと処罰されると伝えましたが,「舗装しても問題無いと聞いている」というので,条例を管理している仙台市建設局百年の杜推進部(河川課)に電話すると,

仙台市「人工芝は,市長の許可を要する工作物でない」

私「人工芝は条例施行規則第12条で規定される市長の許可不要な工作物でないので,市長の許可を要する工作物である」

仙台市「条例施行規則の『許可不要な工作物以外は許可必要』の規定では市民に何が許可必要な工作物であるかわかりにくい,市では,『許可申請の手引き』に記載している工作物のみ「許可必要」として運用している。「人工芝」は許可申請の手引きに記載していないので,環境保全区域において,保全率0%となる敷設を行っても全く問題無い」という驚くべき答えでした。

電話で話をしていても証拠が残らないので,市の電子申請システムで,市長に対して直接「条例第2条で定められた市長としての責務を果たすよう」申請し,その後何度もやりとりが続きますが,仙台市長からの公式回答(市長宛で申請しているため担当部署から回答を市長の,整理番号つき公文書による回答とし,個人情報等を消去して示します)の要約となっている以下の回答を示します。

2020年12月17日付け,仙台市の公式回答
2020年12月17日付け,仙台市の公式回答

つまり

「(条例第9条で定める)市長の許可が必要な工作物」とは

条例施行規則第12条で『市長の許可を要しない』ものとされた以外すべての工作物」でなく,

許可申請の手引きに『市長の許可を要するもの』としてあげられているもののみ

「人工芝」は『手引き』にないので市長の許可不要,また,

建築物を伴わないグランドや駐車場において舗装のみを行う場合は許可不要としているが,

条例では(建築物を含む)「工作物」すべてに対して規制があり,駐車場等について「舗装」を行う場合は,土地の区画形質の変更(土からアスファルト等)にあたるため,許可必要である。

ということで,仙台市においては,「広瀬川の清流を守る条例」の規定(施行規則)より,

市長が予告なしに頻繁に改訂し,許可申請者に配布している「広瀬川の清流を守る条例 許可申請の手引き」に曖昧に記載している内容(注1)が優先し,

宮城第一高校第2グラウンドは,全体敷地を

(1)「建築物を伴う敷地」とそれ以外の

(2)「建築物を伴わないと称する敷地」

に分けて申請しており,建築物を伴わない敷地であれば,保全率0%にしても(手引きにおける許可必要な工作物はないので)全く問題無いという,「条例」を骨抜きにする「手引き」を利用した運用を行っていて,

仙台市においては,「法(条例)の支配」でなく,「市長(注2)(手引き)の支配」が行われていることを示す,驚くべき内容です。


(注1)従来手引きでは,「保全率の規定」について「空き地のルール」

(条例許可申請の手引き2018年6月版p.3より)
(条例許可申請の手引き2018年6月版p.3より)

として,申請者に対し,簡潔かつ明瞭に図示されていたが,宮城第一高校第2グラウンドの違法性を指摘して以降,これらの記載は手引きから消えた。


(注2)現市長は,2005年9月11日,衆議院議員総選挙に宮城1区から民主党公認で出馬し初当選。

2017年7月23日,民進党を離党し,民進党と社民党の支持,日本共産党と自由党の支援を受けた野党統一候補として,自民・公明の県組織等と,現宮城県知事や前仙台市長が推す候補者ら3名を破り初当選,2019年仙台市議選で中立を貫くと自民からも市長を評価する声が上がり始め,

2021年8月1日市長選では,支援を目的に自公,立憲民主党など超党派市議35人の「有志の会」が発足,会に参加しない共産党も自主支援を表明,与野党双方の支援をうけ,無投票阻止を狙い立候補した候補者を大差で破り20万9310票を得て再選。8月20日,仙台市は,投票総数の4.1%にあたる1万498票の無効票のうち,白票は約67%の7012票あったと報告。

(以上Wikipediaより)

2025年8月3日市長選では,悠々と3選を果たす。市議会多数派を占める自民,公明両党との融和を優先し,昨年の衆院選では自民候補と街頭で並び,7月の参院選では自民候補を支える首長組織に加盟。自公との蜜月ぶりは強まるばかりだった。

2005年衆院選で政界に身を投じて20年,市政与党とのなれ合いに浸りきり,積み重ねた経験と知恵に裏打ちされた「郡カラー」を発揮できなければ,市民の支持を失う危うさが付きまとう

(以上河北新報2025年8月4日朝刊より)

市長と議会が対立し市政が停滞している伊東市の方が,市議会は市長のオール与党(2025年8月市長選より共産党が離脱)で条例を無視した独裁的な市政が行われている仙台市より,市政が刷新される希望があるだけ,ましに思われます。


グラウンド外周の塀(高さ1.8mの侵入防止用のメッシュフェンスおよび高さ5(南面)/10m(東・北・西面)の防球フェンス)は工作物のなかでも「建築物」(建築基準法第2条1号)であり,グラウンド外周の(高さ5mを超える)照明灯は,条例でも手引きでも市長の許可が必要な「工作物」であるので,

仮に,人工芝グラウンドは「市長の許可不要」としても,グラウンド外周の「(建築物にあたる)塀」,および「照明灯」に関しては,条例でも,手引きでも「許可必要」であり,これらの工作物(建築物)に関わる敷地においては,市長の許可を得るのには保全率の規定を満たしている必要があるが,人工芝は保全用地でないので保全率の規定を満たすことができず違法であると写真

グラウンド外周にある塀と照明灯
グラウンド外周にある塀(高さ1.8mのメッシュフェンス(境界塀)と高さ10mの防球フェンス)と照明灯(クリックして拡大し,照明灯に公共スペースに光が漏れないように遮光板が設けられているのをご確認下さい)

を添付して指摘したところ,

塀については,

グラウンド外周にある「塀」は「塀」ではなく防球ネットという「鉄柱」であり,許可不要という仙台市長からの回答
グラウンド外周にある「塀」は「塀」ではなく防球ネットという「鉄柱」であり,許可不要という仙台市長からの回答

写真の(侵入防止フェンスおよび防球フェンスは)塀ではなく「防球ネット」という(高さ15m以下の)「鉄柱」であるので「許可不要」。

照明灯については,

単なる照明灯でなく「公共の用に供する照明灯」であるので許可不要という市長からの回答
単なる照明灯でなく「公共の用に供する照明灯」であるので許可不要という市長からの回答

単なる照明灯でなく「公共の用に供する照明灯」であるので「許可不要」ということです。

「塀」でなく「(防球ネットという名の)鉄柱」であるという市長の回答に対し,

鉄柱の間を横に,X字形のワイヤーロープおよび場所によってはパイプで結び,侵入防止のための格子状のメッシュ(網)や防球ネットを張ったのを世間では,(メッシュフェンスおよび防球フェンス)と呼んでいます。そもそもネットは柱の助けなしに空中に浮遊しているのか,

「公共の用に供する」照明灯なので「普通の」照明灯と違って許可不要というが,写真を拡大するとわかるように,公共スペース(道路・住宅側)に光が漏れないように「遮光板」が設けられている。また,グラウンドは宮城第一高校関係者のみが使用し,全周にフェンスを張り巡らせ,門には施錠されていて,一般に開放されているものではないと,真面目に反論しましたところ,

「これまでも回答したとおり環境保全区域内における県の行為は、条例及び施行規則**に適合していることを確認しております」ということで回答が来なくなったので,私自身が告発をすることにしました

**「条例施工規則」に適合しておらず,市長が作った「手引き」に適合しているとする解釈を回答しているだけである

(つづく)