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環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(4)人工芝運動

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宮城県が内容虚偽の文書および図画(図1)

宮城県が宮城第一高校第2グラウンド造成にあたり条例第9条第2項の規定により仙台市に通知した文書に添付された図面
図1 宮城県が宮城第一高校第2グラウンド造成にあたり,「広瀬川の清流を守る条例」の伐採の規定および保全率の規定から免れるために作成し仙台市に通知した,内容虚偽の文書に添付された内容虚偽の図画。

を作成して仙台市長に通知し,条例の保全率の規定に違反する人工芝グラウンド

図2 宮城第一高校第2グラウンド
図2 宮城第一高校第2グラウンド(法定の保全率24%以上に対し,実際の保全率は6%以下である)(Google Earthより)

のアスファルト舗装を始めたとき電話し,

「なぜ環境保全区域に人工芝グラウンドを造成するのか」

と聞いたら

「土のグラウンドだと周辺住民から砂埃の苦情が来る」

という答えでした。

これは「人工芝運動」(注1)にあたると思います。

庭ブロのこの記事をお読みいただいている読者のかたは,「人工芝」についてよくご存じであると思いますが,ここで取り上げている「人工芝」は,庭の修景目的に使うものでなく,「運動場(グラウンド)」として使われるもので,そのためには人工芝グラウンドの構造について理解していただく必要があります。

図3 人工芝グラウンドの構造
図3 人工芝グラウンドの構造の模式図(住友ゴム工業 https://hibrid-turf.com/planning/ をもとに作図)

修景的に使う人工芝であれば,図3の②ゴムチップ,④アスファルト地盤,⑤砕石路盤は基本的に不要となります。

人工芝グラウンドで問題となるのは人工芝の上に撒かれているゴムチップで,これがないと,硬いアスファルト舗装の上に人工芝だけ敷いて運動することと同じになり,緩衝材となるゴムチップ(/目砂)層がないと,転倒等を伴う激しいスポーツではグラウンドを安全に利用することはできません。

ゴムチップは人工芝の上に散布(図3は模式図;実際のロングパイル人工芝の長さは40-65mmで目砂,ゴムチップ層の厚さはそれぞれ人工芝長さの1/3程度)されているだけですから,定期的に補充し平坦にしてやる必要があります。

これらゴムチップはプラスチックの人工芝が紫外線や機械的踏圧で経年劣化・分解したマイクロプラスチック(注2)とともに,河川から海洋に流失し,2050年にはマイクロプラスチックの総重量が海洋性生物の総重量を越える,と予想されていて,これらマイクロプラスチックは,食物連鎖を経て,すでに人類を汚染し始めていると考えられています

「広瀬川の清流を守る条例」において環境保全区域に指定されている土地(図1および2)で,

保全区域外に十分建築可能なトイレ,倉庫を,保全区域内の樹木を違法に伐採してまで建築し,

保全区域外も含め「可能な限り広大な人工芝グラウンド」を造成した「宮城県の人工芝運動」の狙いについて考えていきます。

まず,宮城県の人工芝運動の背景には復興特別税があると思います。税の使途は,復興費用及び償還費用とされ,宮城県でも防災インフラ整備とともに,復興市民広場として,「人工芝グラウンド」が各所に整備されていきます。

人工芝は天然芝と比べるもなく

  • CO2排出量(人工芝は製造・施行段階でCO2排出,さらにヒートアイランド化で地温上昇-CO2排出増大の悪循環/天然芝はCO2を吸収,保水力・蒸散作用により地温を低下させる)
  • 環境汚染(人工芝は生物が棲息できない「死のフィールド」,マイクロプラスチックを大量に持続的に河川から海洋に排出し,海洋汚染,海洋生物(~人間)の生命を脅かし,県内産農水産物への食の安全性・信頼制に疑問を抱かせる/天然芝は生物多様性を支え,豊かな自然環境をもたらし,市民生活に憩いをもたらす)
  • 防災性(アスファルト舗装上にプラスチックの人工芝を張ってゴムチップを敷設した人工芝グラウンドは地面の透水性,保水力を大幅に低下させ,特に3m以上の洪水浸水が想定され
    図 洪水浸水想定区域
    図4 宮城第一高校第2グラウンド(図中「3.0m」の「文字列」の上にある)は3m以上の洪水浸水想定区域にある(仙台市のハザードマップより)

    早期の立退き避難が必要である当地においては内地浸水の大きな脅威となり,大規模火災発生時には有毒ガスの発生も考えられる/天然芝グラウンドは植物のもつ保水力および蒸散作用により洪水被害を抑え,火災時には緑の防火壁となり延焼を防ぐ)

  • 教育効果(天然芝は環境を保全し次世代に引き継ぐには知識と費用と労力が必要であることを示す/人工芝は一旦自然環境を破壊してしまうと,犯罪者は処罰され,自然環境を元通りに戻すのが非常に困難になる,という反面教師の意味しかない)
  • 経済性(使い捨ての人工芝は高額な設備費に加えて膨大な維持費(注3)がかかる庭の貧乏神/自己増殖・補修性のある天然芝は適切に管理すると庭は年々豊かになる)

など,すべての点で大きく劣っています。

使い捨てで定期的に貼り変える必要があるのは,知らずに導入した方には後で大後悔するデメリットであるが,売る方にとっては一旦設置させると定期的に収益が確保できるという大きなメリットがあり,ここに利権がある(注4)と宮城県は眼をつけたか,復興特別税を使って行っていた公立高校の耐震補強を含む改築工事の一環として,県立高校のグラウンドの全面人工芝化,を目論見,まず「第一高校」の新グラウンドから「宮城県の人工芝運動」が始まったと考えています。

ただ,宮城県にとって誤算だったのは,第2グラウンドが環境保全区域にあったことですが,仙台市にとっても,市立中学・高校のグラウンドを人工芝にすることは,宮城県と同じメリットがあるので,「許可不要」を連発して,もともと放置(注5)していた「広瀬川の清流を守る条例」を骨抜きにし,宮城県に全面協力しておこなってきた経緯があると考えています。

宮城県による(震災復興を契機としたと思われる)「高校グラウンド全面人工芝化」を目論んだ人工芝運動は,広瀬川の清流を守る条例違反での告発(「環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(2)法の番人」参照)で潰えました。

しかしながら,宮城県大郷町の『スマートスポーツパーク構想』(注6)で,実際に「人工芝運動」が行われたことが法廷であきらか(注7)になっているように,食材王国宮城の農水産物の「食の安全」への消費者の信頼をなくすことで,復興を妨げる恐れのある人工芝運動が,今なお続いています。

1974年9月28日「衆知と総力を結集し,市民あげて広瀬川の清流を守ることを決意し」制定された『広瀬川の清流を守る条例』の精神に立ち返り,1990年3月28日 制 定 の 『四万十川清流保全条例 』で示された清流の基本理念

「 清流とは,流水と流水の源である自然環境及び住民生活が適正な調和を保つ状況をいう」

に則り,消費者の信頼を得る行動を行うことが宮城県には何より求められていると考えます。


(注1) 人工芝運動(Astroturfing)とは,「団体・組織が背後に隠れ,自発的な草の根運動に見せかけて行う意見主張・説得・アドボカシーの手法」(Wikipedia

(注2)広義のマイクロプラスチックの定義には洗剤,柔軟剤,食品添加物,医薬化粧品,肥料,ゴム製品等も含まれ,最大の発生源は,(環境意識の高いEUでは)人工芝グラウンドで継続的かつ大量に使用されるゴムチップであるとされています。

(注3)一般的な高校のグラウンドを人工芝にする費用は約1億3500万円で天然芝より圧倒的に高い。しかも人工芝は5~10年置きに全面張り替えに1億円程度の費用がかかり,さらに,日常的に補充する必要のあるゴムチップの散布・平坦化等の費用としてランニングコストが年間1000万円程度かかるとされており(【必見】高校での人工芝導入!部活動に与える影響から導入費用まで!より),これらの費用が税金から「持続的な環境汚染」のために使われるのです。

しかも宮城第一高校第2グラウンドをみると分かるように,一旦人工芝グラウンドにしてしまうと,土のグラウンドに戻す(天然芝に変える)のがほぼ不可能となり,不可逆的に環境破壊してしまいます。

(注4)宮城県が利権目的で行った最も不条理な事業は2022年4月開始の宮城方式水道民営化事業です。これは,水道設備を県が所有したまま民間事業者に運営させる方式で,水道事業を民間に売り渡したようには見えませんが,水道事業で最もコストのかかる水道設備の維持管理費用は県(民)が負担し,民間は利益が出る部分(水の販売)だけ行って,県民は県税と水道料金で二重に水道料金を支払う方式です。詳細については,とてもここで論じられる問題でないので「環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(5)カッコウの巣の上で」で改めて論じる予定です。なお,この事業のパブリックコメントでも「人工芝運動」が行われています。

(注5)条例を実質的なものとするために最も重要な使命をおびている広瀬川清流保全審議会は,近年保全率の改悪(例えば宮城第一高校第2グラウンドのある第二種環境保全区域では,グラウンド造成前年に保全率が30%から24%に引き下げられている)以外に目立った活動はしておらず,大規模人工芝グラウンドを市長の許可を要する工作物に指定するような,「清流条例」の真価を問われるような見直しは,リーダーシップも使命感も感じられない委員長,学識のない学識経験者,旅行代理店丸抱え(報告書も代理店が作成)海外視察旅行に行って審議会には欠席している市議会議員などからなるメンバーによって一切行われていません(仙台市HPで公開されていた審議会議事録などをもとにした2021年当時の個人の感想です)。

仙台市は「広瀬川の清流を守る条例」を形骸化させ放置する一方,「広瀬川創世プラン」なるものを行い,市の意向に沿って活動している団体を「支援」しています。

(注6)2019年東日本台風で被災した農地にサッカーコート12面(すべて人工芝グラウンド)などを整備するもの。町議会はこれまで「事業費が不透明」などどして予算案を否決(ミヤテレNEWS(2025年2月25日),なおこの背景,つまり,農地を売却したい町側の思惑,については,ミヤテレNEWS(2025年5月17日)で見え隠れしていますが,本質的には,宮城県の水道民営化事業と同じ構図を感じていただけると思います)

(注7)宮城・大郷町が進める『スポーツパーク構想』に反対する議会の解散を問う住民投票に必要な署名の有効性について争われたもので,仙台地裁は「違法署名」14人(60,70代が各1,80代が5人,90代が7人で最高齢98歳)を尋問することを決定(河北新報2025年5月15日)。議会解散を求める署名運動は町が構想に反対する議会を切り崩すため住民運動に見せかけて行った「人工芝運動」と考えられます。