宮城第一高校第2グラウンドは,「広瀬川の清流を守る条例」の定める保全率の規定-第2種環境保全区域内の土地において,1) 河岸線に接し2m幅以上の保全用地を確保(条例施行規則第14条一ハ(1))したうえで,2) 全体として24%以上の保全用地を確保(条例施行規則実施要領第2条)する-を満たしておらず,宮城県が行った開発行為は違法である。

違法かどうかは裁判官が審判するが,仙台地検は告発をうけても「罪とならず」という理由で不起訴とし,具体的な理由を問い合わせても「答えられない」ということである。
広瀬川の清流を守る条例では,処罰の対象となるのは,「市長の許可を受けずに行った者」(条例第13条)であり,国や地方公共団体については,条例第9条第2項特別規定により,「(市長の許可でなく)通知によって行う」よう規定されており,この特別規定を,仙台地検は,国や地方公共団体は,条例の規定に反する行為を行っても,市長の許可が不要なので処罰されない,とする「法の番人」でなく,「知事の弁護人」としての法解釈を行い,不起訴としていると考えています。
私自身は,第9条第2項の規定は,
市長は,自分自身や市の上位の行政機関である県や国が行う開発行為について「許可を与えない」ことを言っているだけで,
第2項は「市長の許可は不要である」でなく,「前項の規定に『かかわらず』(かな書きのかかわらずは,前項規定を無視(関わらず)するのでなく尊重しなければならないという意味である)...『市長に通知しなければならない』」とあるので,条例の基準に適合しない,「市長の許可が得られない」開発行為を行った場合は,市長への通知をしようがしまいが,第1項の規定の「市長の許可を得ずに行った者」として処罰される。
こう考える理由は,条例では,違反行為を,「保全率の規定に違反した者,伐採の規定に違反した者,…」というように一つ一つ記載せず,「市長の許可を得ずに行った者」という一語で要約しているからで,このような法文を簡潔にするための「違反条項の要約」は,清流条例が参考としたと思われる建築基準法でも,他の法令でも広く行われているからですが,仙台地検によると(検察官の個人としての見解ではない(注)),国や県は,一般事業者と違って,条例の規定に反する開発行為を無制限に行うことができ,罰則もない「超法規的存在である」というのが,「裁判官に判断を委ねるまでもない」法の番人としての正しい解釈であるということのようです。
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(注)2020年10月30日仙台地検に最初の告発をした際,告発担当者から,職業を(内部記録のためと)問いただされ,薄ら笑いを浮かべながら「なぜ,住民訴訟にしないのか,他にも保全率の規定を満たしていない住宅はたくさんある。そちらの方から捜査することになる」と,告発すれば,周辺住民も処罰されるぞ,という脅しともとれる発言があり,おそらく起訴しないであろうという印象をうけました。
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仙台地検が起訴しない限り,宮城県の行った違法と思われる行為について裁判官の審判を仰ぐことはできません。
「広瀬川の清流を守る条例」では,市長,事業者(宮城県知事),市民についてそれぞれの果たすべき責務を規定(第2条,第3条,第4条)しています。
市民としてできる対応は限られています。
宮城県の行った「伐採の規定」違反については,時効が成立している恐れがありますが,「保全率の規定」については,「保全率」は,建ぺい率のような建築時に適用される確認条項でなく,日常的に行われる環境保全のための規定であり,道路交通法でいう「制限速度」と同じなので,違法工作物である人工芝が条例の基準を満たすまで撤去されない限り「違法行為は継続している」

ので,時効は進行しないと考えます(これも告発人や検察官でなく,裁判官が判断する事項です)。
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宮城県の行った条例の規定に違反する行為について宮城県が仙台市に条例第9条2項の規定に従って提出した下記の図面をもとに説明する

1)条例では第二種環境保全区域(図の黒線より下(南側)の赤枠内の土地)においては,河岸線に接する部分について幅2m以上の保全用地を確保したうえで,全体として24%以上の保全用地を確保する必要がある。
図の赤枠部分に造成されたグランド外周の塀は「建築物」(建築基準法第2条1号)にあたるので,保全率を計算する母数は,図の赤枠内,黒線より下の部分にあたるが,グランド西側(図左)の河岸線に接する部分においては,全く保全用地が確保されておらず(上の写真参照)全体としての保全率も6%にも満たず条例の規定に反する。
なお,保全率を計算する母数となるのは「工作物に関わる敷地面積」であって,「建築(基準法でいう)敷地」ではない。宮城県は工作物に関わる敷地では,「人工芝」があることから保全率の規定を満たすことができないので,意図的に「建築敷地(図の青枠内)」を条例で定める「工作物に関わる敷地」と偽って通知しているのである。
2)宮城県は,グラウンド東側で前所有者である国によって良好な状態で保全されていた樹木を違法に伐採する目的で,樹木の植わっていた場所に,「旗竿状」の建築敷地(図の青枠)を設定し,トイレ・倉庫を建築するには樹木を伐採するのをやむなし,として伐採したが,グランド外周の塀は「建築物」にあたり(建築基準法第2条1号),敷地は「一の建築物又は用途上不可分の関係にある二以上の建築物(ここでは,塀,トイレ,倉庫)のある一団の土地」(建築基準法施行令1条1号)と定義されているので図の赤枠の敷地全体となり,本図面は宮城県が行った行為が,「広瀬川の清流を守る条例」に違反しているだけでなく,「建築基準法」にも違反していることを明白に示すものである。なお,伐採を行った場合は,伐採により損なわれた自然環境を回復するため,建築後「代替樹」を植樹する必要があるが,宮城県は,青枠敷地内に,代替樹の植樹(狭溢な旗竿地なので,敷地外周に沿った生け垣および倉庫,トイレの壁面および屋上緑化が必要であろう)を一切行っていない。
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上記指摘に対する仙台市長からの回答
宮城県はグラウンド敷地東側の建築敷地(図の青枠内)において条例の規定にのっとり,通知をしたうえで,樹木の伐採を行い,保全率30%の保全用地を確保した開発行為を行っており問題無い。
青枠敷地外に条例で市長の許可を必要とする工作物は設置していない。
当方:人工芝グラウンドは条例で「市長の許可不要の工作物」でないので,設置に許可が必要であり,グラウンド全体の保全率は6%以下で違法である。
仙台市:条例の規定の「許可不要な工作物以外は許可必要」であるとすると,市民には何が許可必要な工作物かわかりにくい。仙台市では,条例の「許可不要なもの以外は許可必要」でなく,「(条例許可申請の手引きにおいて)許可必要と指定したもののみ許可が必要」であるという運用を行っている。人工芝グラウンドは「手引き」において許可必要な工作物でないので,許可不要であり,たとえ保全率0%であっても問題無い)。
当方:人工芝グラウンドが許可不要であっても,グランド外周の塀については建築基準法で定める「建築物」にあたり,条例でも(工作物のなかでも建築物(建築基準法に定めるもの)は設置に市長の許可必要),で「手引き」においても「建築物」は市長の許可が必要である。
仙台市:グラウンド外周にあるのは,(建築物にあたる)「塀」ではなく,「高さ15m以下の鉄柱」と「防球ネット」であり,いずれも許可不要である。
当方:グラウンド外周にある「高さ5mを超える照明灯」は条例では「許可必要」である。
仙台市:グラウンド外周の照明灯は「高さ10m以下の公共のための照明灯」であり許可不要である。(公共のためと言い逃れしているが,グラウンド北,西部の照明灯には,道路側に光が漏れないよう光害防止の「遮光板」がついているので公共のためとはいえない)
当方:工作物の明確な定義は条例本文にも建築基準法にもないが,「人工物のうち,地面に定着したもの」を指すと一般にされている。仙台市が指定した工作物以外は,市長の許可不要で保全率の基準をみたす必要がない,という運用は仙台市長の裁量の範囲を大きく逸脱している。9000㎡を超える当グラウンドにおいて,宮城県が県税や震災復興特別税を使って造成した宮城第一高校第2グラウンド造成工事は環境テロといっても過言でない。市長は市長としての責務を果たすべきである。
仙台市:宮城県は条例の規定に則り,適正に工事を行っている
が市長からの最期の回答となり,市民としての責務を果たすべく告発を行うことにしました。