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環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(4)人工芝運動

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宮城県が内容虚偽の文書および図画(図1)

宮城県が宮城第一高校第2グラウンド造成にあたり条例第9条第2項の規定により仙台市に通知した文書に添付された図面
図1 宮城県が宮城第一高校第2グラウンド造成にあたり,「広瀬川の清流を守る条例」の伐採の規定および保全率の規定から免れるために作成し仙台市に通知した,内容虚偽の文書に添付された内容虚偽の図画。

を作成して仙台市長に通知し,条例の保全率の規定に違反する人工芝グラウンド

図2 宮城第一高校第2グラウンド
図2 宮城第一高校第2グラウンド(法定の保全率24%以上に対し,実際の保全率は6%以下である)(Google Earthより)

のアスファルト舗装を始めたとき電話し,

「なぜ環境保全区域に人工芝グラウンドを造成するのか」

と聞いたら

「土のグラウンドだと周辺住民から砂埃の苦情が来る」

という答えでした。

これは「人工芝運動」(注1)にあたると思います。

庭ブロのこの記事をお読みいただいている読者のかたは,「人工芝」についてよくご存じであると思いますが,ここで取り上げている「人工芝」は,庭の修景目的に使うものでなく,「運動場(グラウンド)」として使われるもので,そのためには人工芝グラウンドの構造について理解していただく必要があります。

図3 人工芝グラウンドの構造
図3 人工芝グラウンドの構造の模式図(住友ゴム工業 https://hibrid-turf.com/planning/ をもとに作図)

修景的に使う人工芝であれば,図3の②ゴムチップ,④アスファルト地盤,⑤砕石路盤は基本的に不要となります。

人工芝グラウンドで問題となるのは人工芝の上に撒かれているゴムチップで,これがないと,硬いアスファルト舗装の上に人工芝だけ敷いて運動することと同じになり,緩衝材となるゴムチップ(/目砂)層がないと,転倒等を伴う激しいスポーツではグラウンドを安全に利用することはできません。

ゴムチップは人工芝の上に散布(図3は模式図;実際のロングパイル人工芝の長さは40-65mmで目砂,ゴムチップ層の厚さはそれぞれ人工芝長さの1/3程度)されているだけですから,定期的に補充し平坦にしてやる必要があります。

これらゴムチップはプラスチックの人工芝が紫外線や機械的踏圧で経年劣化・分解したマイクロプラスチック(注2)とともに,河川から海洋に流失し,2050年にはマイクロプラスチックの総重量が海洋性生物の総重量を越える,と予想されていて,これらマイクロプラスチックは,食物連鎖を経て,すでに人類を汚染し始めていると考えられています

「広瀬川の清流を守る条例」において環境保全区域に指定されている土地(図1および2)で,

保全区域外に十分建築可能なトイレ,倉庫を,保全区域内の樹木を違法に伐採してまで建築し,

保全区域外も含め「可能な限り広大な人工芝グラウンド」を造成した「宮城県の人工芝運動」の狙いについて考えていきます。

まず,宮城県の人工芝運動の背景には復興特別税があると思います。税の使途は,復興費用及び償還費用とされ,宮城県でも防災インフラ整備とともに,復興市民広場として,「人工芝グラウンド」が各所に整備されていきます。

人工芝は天然芝と比べるもなく

  • CO2排出量(人工芝は製造・施行段階でCO2排出,さらにヒートアイランド化で地温上昇-CO2排出増大の悪循環/天然芝はCO2を吸収,保水力・蒸散作用により地温を低下させる)
  • 環境汚染(人工芝は生物が棲息できない「死のフィールド」,マイクロプラスチックを大量に持続的に河川から海洋に排出し,海洋汚染,海洋生物(~人間)の生命を脅かし,県内産農水産物への食の安全性・信頼制に疑問を抱かせる/天然芝は生物多様性を支え,豊かな自然環境をもたらし,市民生活に憩いをもたらす)
  • 防災性(アスファルト舗装上にプラスチックの人工芝を張ってゴムチップを敷設した人工芝グラウンドは地面の透水性,保水力を大幅に低下させ,特に3m以上の洪水浸水が想定され
    図 洪水浸水想定区域
    図4 宮城第一高校第2グラウンド(図中「3.0m」の「文字列」の上にある)は3m以上の洪水浸水想定区域にある(仙台市のハザードマップより)

    早期の立退き避難が必要である当地においては内地浸水の大きな脅威となり,大規模火災発生時には有毒ガスの発生も考えられる/天然芝グラウンドは植物のもつ保水力および蒸散作用により洪水被害を抑え,火災時には緑の防火壁となり延焼を防ぐ)

  • 教育効果(天然芝は環境を保全し次世代に引き継ぐには知識と費用と労力が必要であることを示す/人工芝は一旦自然環境を破壊してしまうと,犯罪者は処罰され,自然環境を元通りに戻すのが非常に困難になる,という反面教師の意味しかない)
  • 経済性(使い捨ての人工芝は高額な設備費に加えて膨大な維持費(注3)がかかる庭の貧乏神/自己増殖・補修性のある天然芝は適切に管理すると庭は年々豊かになる)

など,すべての点で大きく劣っています。

使い捨てで定期的に貼り変える必要があるのは,知らずに導入した方には後で大後悔するデメリットであるが,売る方にとっては一旦設置させると定期的に収益が確保できるという大きなメリットがあり,ここに利権がある(注4)と宮城県は眼をつけたか,復興特別税を使って行っていた公立高校の耐震補強を含む改築工事の一環として,県立高校のグラウンドの全面人工芝化,を目論見,まず「第一高校」の新グラウンドから「宮城県の人工芝運動」が始まったと考えています。

ただ,宮城県にとって誤算だったのは,第2グラウンドが環境保全区域にあったことですが,仙台市にとっても,市立中学・高校のグラウンドを人工芝にすることは,宮城県と同じメリットがあるので,「許可不要」を連発して,もともと放置(注5)していた「広瀬川の清流を守る条例」を骨抜きにし,宮城県に全面協力しておこなってきた経緯があると考えています。

宮城県による(震災復興を契機としたと思われる)「高校グラウンド全面人工芝化」を目論んだ人工芝運動は,広瀬川の清流を守る条例違反での告発(「環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(2)法の番人」参照)で潰えました。

しかしながら,宮城県大郷町の『スマートスポーツパーク構想』(注6)で,実際に「人工芝運動」が行われたことが法廷であきらか(注7)になっているように,食材王国宮城の農水産物の「食の安全」への消費者の信頼をなくすことで,復興を妨げる恐れのある人工芝運動が,今なお続いています。

1974年9月28日「衆知と総力を結集し,市民あげて広瀬川の清流を守ることを決意し」制定された『広瀬川の清流を守る条例』の精神に立ち返り,1990年3月28日 制 定 の 『四万十川清流保全条例 』で示された清流の基本理念

「 清流とは,流水と流水の源である自然環境及び住民生活が適正な調和を保つ状況をいう」

に則り,消費者の信頼を得る行動を行うことが宮城県には何より求められていると考えます。


(注1) 人工芝運動(Astroturfing)とは,「団体・組織が背後に隠れ,自発的な草の根運動に見せかけて行う意見主張・説得・アドボカシーの手法」(Wikipedia

(注2)広義のマイクロプラスチックの定義には洗剤,柔軟剤,食品添加物,医薬化粧品,肥料,ゴム製品等も含まれ,最大の発生源は,(環境意識の高いEUでは)人工芝グラウンドで継続的かつ大量に使用されるゴムチップであるとされています。

(注3)一般的な高校のグラウンドを人工芝にする費用は約1億3500万円で天然芝より圧倒的に高い。しかも人工芝は5~10年置きに全面張り替えに1億円程度の費用がかかり,さらに,日常的に補充する必要のあるゴムチップの散布・平坦化等の費用としてランニングコストが年間1000万円程度かかるとされており(【必見】高校での人工芝導入!部活動に与える影響から導入費用まで!より),これらの費用が税金から「持続的な環境汚染」のために使われるのです。

しかも宮城第一高校第2グラウンドをみると分かるように,一旦人工芝グラウンドにしてしまうと,土のグラウンドに戻す(天然芝に変える)のがほぼ不可能となり,不可逆的に環境破壊してしまいます。

(注4)宮城県が利権目的で行った最も不条理な事業は2022年4月開始の宮城方式水道民営化事業です。これは,水道設備を県が所有したまま民間事業者に運営させる方式で,水道事業を民間に売り渡したようには見えませんが,水道事業で最もコストのかかる水道設備の維持管理費用は県(民)が負担し,民間は利益が出る部分(水の販売)だけ行って,県民は県税と水道料金で二重に水道料金を支払う方式です。詳細については,とてもここで論じられる問題でないので「環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(5)カッコウの巣の上で」で改めて論じる予定です。なお,この事業のパブリックコメントでも「人工芝運動」が行われています。

(注5)条例を実質的なものとするために最も重要な使命をおびている広瀬川清流保全審議会は,近年保全率の改悪(例えば宮城第一高校第2グラウンドのある第二種環境保全区域では,グラウンド造成前年に保全率が30%から24%に引き下げられている)以外に目立った活動はしておらず,大規模人工芝グラウンドを市長の許可を要する工作物に指定するような,「清流条例」の真価を問われるような見直しは,リーダーシップも使命感も感じられない委員長,学識のない学識経験者,旅行代理店丸抱え(報告書も代理店が作成)海外視察旅行に行って審議会には欠席している市議会議員などからなるメンバーによって一切行われていません(仙台市HPで公開されていた審議会議事録などをもとにした2021年当時の個人の感想です)。

仙台市は「広瀬川の清流を守る条例」を形骸化させ放置する一方,「広瀬川創世プラン」なるものを行い,市の意向に沿って活動している団体を「支援」しています。

(注6)2019年東日本台風で被災した農地にサッカーコート12面(すべて人工芝グラウンド)などを整備するもの。町議会はこれまで「事業費が不透明」などどして予算案を否決(ミヤテレNEWS(2025年2月25日),なおこの背景,つまり,農地を売却したい町側の思惑,については,ミヤテレNEWS(2025年5月17日)で見え隠れしていますが,本質的には,宮城県の水道民営化事業と同じ構図を感じていただけると思います)

(注7)宮城・大郷町が進める『スポーツパーク構想』に反対する議会の解散を問う住民投票に必要な署名の有効性について争われたもので,仙台地裁は「違法署名」14人(60,70代が各1,80代が5人,90代が7人で最高齢98歳)を尋問することを決定(河北新報2025年5月15日)。議会解散を求める署名運動は町が構想に反対する議会を切り崩すため住民運動に見せかけて行った「人工芝運動」と考えられます。

環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(3)第9条

1974年9月28日制定された「広瀬川の清流を守る条例」は,かつては,仙台市民にとって憲法のようなものだ,といわれていたようであるが,その理由は格調高い前文から想像することができる:

https://www.city.sendai.jp/hirosegawasose/kurashi/shizen/midori/midori/seryu/documents/jyourei.pdf
広瀬川の清流を守る条例 前文

条例は第1条(趣旨),第2条(市長の責務),第3条(事業者の責務),第4条(市民の責務)と続き,

第9条(環境保全区域における行為の制限)で

条例第9条1項
第9条1項

(1)~(6)に具体的にあげられている行為を行う者は,あらかじめ「市長の許可」を受けなければならない(注1),と規定し


(注1)第9条には,第2項として

第9条2項
第9条2項
 とあり,国の機関又は地方公共団体が開発行為を行う場合,「市長の許可」でなく,「市長への通知」をもって行うよう規定されている。この特別規定の理由は(自分自身も最近ようやく理解したところであるが)明らかである:
1.市長自身が事業者となって開発行為を行う場合,「自分で自分を裁くことはできない」という自然法の大原則があるので,市長は自分自身に対して許可を与えることができない。そこで,事業者である市長が,市長に対して通知を行う形で市長の許可を得ずに工事を行うこととなる。当然ながら,通知内容は,(市長の許可が得られる)広瀬川の清流を守る条例施行規則 第14条(環境保全区域における許可基準)に適合しているものでなければならない(条文の ...前項の規定にかかわらず,...通知しなければならない)。
2.国や県など地方公共団体が開発行為を行う場合,市長は国や県の機関に対して法的には許可を与えることはできる。しかしながら,県や国は行政制度上,市の上位機関にあたり,市は県や国の指導監督下に行政行為を行うのが基本であるから,市長が県知事など上位の行政機関に所属する事業者に許可を与えるのでなく,上位の機関に属する事業者が市長に通知することをもって行うかたちとする。通知内容は,前項1.の(事業者である)市長が市長に通知する場合と同様,条例施行規則第14条の規定に適合している必要がある。
 (以上が第2項で,県や国のような,法的には市長が許可を与えることができる機関に対しても,通知しなければならない,としている公式理由であるが,「衆知と総力を結集し(条例前文)」次世代に対する「重大な責務(責任+義務)」に根ざして制定された条例であるから,今般,宮城第一高校第2グラウンド造成工事で実際に起こったように,市長が県や国の圧力に屈して,迎合して,あるいは共謀して「不正な許可」を与えたり,「許可不要」として実質的に不正な許可を与える事態がくることを想定して,これを防ぐため,県や国など市より上位にある機関に対しては「(市長は)許可を与えない」ので,「市長に(自ら行う開発行為が許可基準に適合していることを)通知するよう」規定しているのである)。くだけて言うと,市長は県や国の事業者の開発行為に「お墨付き」は与えません。結果については「自己責任」でお願いします,ということです。

この第9条の規定に違反した者(市長の許可を受けずに行った者,または市長に条例の規定に適合した通知を行わず(市長の許可を受けず)開発行為を行ったもの)に対し,第13条(中止,原状回復命令)で市長は工事の中止や,原状回復を命ずることができ,第18条(罰則)で,第13条の規定による命令に違反した者を処罰することができる,としており,この条例が単なる憲章的なものでなく,法的な拘束力をもったものであることを示している(末尾の参考文献参照)。

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2024年春,兵庫県知事を巡る混乱を知り,思うところあって,宮城県知事を再告発することにしました。

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本題に入る前に,まず前回までのおさらいを時系列で説明していきます。

1.宮城県は「広瀬川の清流を守る条例」で第二種環境保全区域に指定されている土地(図1,税務大学仙台研修所校跡地)

宮城第一高校第2グラウンド造成時における第二種環境保全区域(ピンクの帯の間の水色の部分,仙台市都市計画情報提供サービスより),仙台研修所は税務大学をさす
図1 宮城第一高校第2グラウンド全体敷地における第二種環境保全区域(ピンクの帯の間の水色の部分,仙台市都市計画情報提供サービスより),税務大学仙台研修所校当時「校舎」は保全区域外(図ピンク帯より上側)に建築されており保全率はほぼ100%。グラウンド(「校庭」)であるから敷地中央部に樹木はないが,グラウンド外周には樹木が良好に保全されていた(図2)

において,宮城第一高校第2グラウンドを造成する際に,グラウンド東側で前所有者である国によって良好な状態で保全されてきた樹木(図2,⇔,⇒)

宮城第一高校第2グラウンド造成前
図2.宮城第一高校第2グラウンド造成によって伐採されたグラウンド東南部にあった樹木(⇔,⇒,Google Earthより)

を伐採する目的で,「樹木の植わっていた場所」に恣意的に旗竿状の「建築物の敷地」と称する土地(図4青枠内)を設定し,この敷地にトイレ,倉庫を建築するには樹木の伐採が不可欠として伐採し,それ以外の土地(図4赤枠内から青枠内の土地を差し引いた土地)においては,条例第9条で規定される市長の許可を必要とする工作物はないとして,市長の許可を得ず(市長に通知せず)に,これまで保全率100%で保全されてきたグラウンド敷地のほぼ全体(96%)をアスファルトで舗装して徹底的に破壊し,プラスチックの人工芝で被覆した上に,緩衝用ゴムチップを散布し,条例の規定に適合しない保全率5%程度の「人工芝グラウンド」を造成し,現在も,広瀬川および太平洋に環境汚染物質である,ゴムチップやマイクロプラスチック(劣化した人工芝破片)を排出し続けている

トイレ,倉庫の建築後数年して建築した更衣室(〇印,Google Earthより)
図3.宮城第一高校第2グラウンド現況。トイレ(画像上のグラウンド境界に見える赤屋根),倉庫(灰青色屋根)の建築をするためやむを得ないとして樹木(図2)を伐採し,税務大学時代保全率100%で保全されてきた校庭(図1)をアスファルト舗装して破壊し,保全率6%に満たないーこのグラウンド用地の保全率は24%,つまり土地の約1/4を,土のままか,植物が植わっている状態の保全用地としなければならない-「人工芝グラウンド」を造成した。-さらに宮城県の行った行為の”悪質性”を示すものとして,グラウンド造成工事完了後,部室棟(図中〇印)を,グラウンド開設当時は駐輪場としていた保全区域外の土地(画像左上角)に増築した(トイレは部室棟に併設できるし,併設しないとしても税務大学当時のように,保全区域外ー図1参照-に設置できる。ハンドボール(orホッケー)コートが不自然に北側(図中左)保全区域外に寄せられている点に注目-サッカーグラウンドと同じ南北位置に設置すれば,トイレ,倉庫は樹木を伐採せず,ハンドボールコート北に十分設置できる。(Google Earthより-ご注意,この画像は2Dの衛星写真をもとに立体再構成して任意の視点からの画像を生成しています。高さ10mのフェンス等は正確には再現されていませんが影は残っています)。宮城第一高校第2グラウンドは,宮城県が仙台市の全面協力のもと,仙台地検の組織的支援(「罪とならず」という理由による不起訴,不起訴できないものについては告発状放置)により現在も広瀬川,太平洋をゴムチップ,マイクロプラスチックで汚染しながら,運用中の宮城県を象徴する違法(と思われる)グラウンドである
宮城第一高第2グラウンド敷地図
図4.仙台市に請求して入手した,宮城県知事が仙台市長に「通知」した文書に添付された,宮城第一高第2グラウンド敷地図。市長の許可が必要な工作物は図中青枠内のトイレ,倉庫のみで,それ以外の赤枠内から青枠内の土地を除いた土地に許可の必要な工作物はないとして,「グラウンド境界塀」,「防球フェンス」,「照明灯」,「人工芝グラウンド」等の工作物を市長の許可を得ずに(市長に通知することなく)設置した(図3)
(なぜ,宮城県が「人工芝グラウンド」を,環境保全区域の自然を原状回復がほぼ不可能な状態になるまで破壊し造成したかについては,次回,「環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(4)人工芝運動」で考察する予定です)。
2.仙台市に宮城第一高校第2グラウンドの違法性を指摘したところ(「環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(1)裏切り」),
樹木の伐採については,土地の「(自作自演の)著しい不整形」(条例施行規則第14条七ロ)を理由とし
保全率については,条例の「工作物に係わる敷地」(図4赤枠内)における「保全用地」の割合ではなく,「宮城県がグラウンド一部に恣意的に設定した建築物の敷地(図4青枠内)」に係わる「保全用地(図4緑)」の割合をさし,この定義では保全率は30%
であるので「環境保全区域内における県の行為は、条例及び施行規則に適合していることを確認しております。」(2020年12月28日付け仙台市よりの回答,整理番号2-2966) なお,
  • 「人工芝グラウンド」については,人工芝は「手引き」で許可必要な工作物のリストにないので,「許可不要」
  • グラウンド外周の「塀」については防球ネットという「鉄柱」であるので「許可不要」
  • 照明灯については,(公共スペースに光が漏れるのを防ぐ遮光板つきであるが)「公共の用に供するもの」なので許可不要だそうである。

ここまで読まれたかたは,

それでは,仙台市の環境保全区域で庭をつくる場合,土地全面を人工芝グラウンドにしたり舗装して駐車場にして保全率0%としても,処罰されない(注2)と思われるかも知れませんが,これは,事業者が宮城県知事(や大手の民間事業者の場合)であるからで,一般市民が,同じことをして,それが仙台市から指摘されれば,原状回復を求められ(条例第13条),従わなければ処罰され(条例第18条)ます。


(注2)ピンだけで土にとめた(簡単に剥がせる=土地に定着しない)人工芝や,(土間コンクリートや舗装のない)土のままの駐車場(土のままであれば土は土地に定着しない,車も人工物であるが土地に定着しないので,条例でいう「工作物」にあたらない)なら違法にならない


3.そこで,市長に代わり,事業者である宮城県知事を条例第9条違反で告発しました(「環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(2)法の番人」)が,

仙台地検は,「罪とならず」という理由で不起訴とし,
検察審査会に申し立てを行いましたが,「不起訴相当」という議決となり撤退しました。

(ここから経緯を簡単に述べながら本題に入ります。途中経過が不要なかたは最後の部分にお進みください)


再告発するにあたり,仙台地検が不起訴とした理由が分かりません。

 詳細は省略しますが,
2021年4月の告発では,告発事実を「条例第9条違反」((市長が許可不要と言ったので)市長の許可を受けずに行った)としましたが,今回は「条例第9条2項違反」(図4の青枠の土地において「通知」をしなかった)で再告発しましたが,「不起訴」となり,審査申し立てを行いましたが,「不起訴相当」となり,

 

不起訴となった理由について,

①条例違反3年の時効である(告発後電話で,工事開始と同時に時効が進行するという見解を言われたので,時効は保全率の基準を満たすように違法工作物が撤去されてから進行する,と内容証明郵便で回答)

条例第9条第2項違反には罰則がない(罰則があるのは第1項違反のみである)

の2点を検討し,引き時かと思いましたが,

①については「高速道路の論理」(注3)で,土地ごとに定められた保全率の規定は,道路交通法による制限速度のようなものである。制限速度を超えて走行する限り時効が進行しないように,保全率の規定に違反する工作物が保全率の規定を満たすまで撤去されない限り時効は進行しない。保全率が制限速度と異なるのは,自然環境は一旦破壊されると,原状回復が非常に困難であるため,事前に市長の許可が必要なだけである。


(注3)高速道路の論理 ファイル共有ソフト開発者が著作権法違反幇助に問われた事件の弁護団がとった論法:ファイル共有ソフトの開発者が著作権法違反幇助に問われるのであれば,高速道路で速度違反をしたら,高速道路を作った人が,速度違反幇助に問われるのか,という論理。法令解釈で,比較的わかりやすい道路交通法のたとえで相手の主張を打ち砕く手法


②については,県知事は市長の許可を受けずに通知によって工事を行ったものであり,市長の許可が得られない(=条例の規定に違反する)行為を行った場合は,通知をしようがしまいが,「市長の許可を得ずに行った者」として処罰される

ということで,告発事実を「条例第9条1項違反」として3度目の告発を行いましたが,当初の「裏冤罪事件」を晴らしてやる,という意気込みは失せ敗北感濃厚でした。

この告発にあたって障害にしかなっていない,広瀬川の清流を守る条例,第9条2項の規定を避けるため,実は,2回目の告発のあと,図4の通知の,建築物の敷地を青枠内の旗竿状の土地としたのであれば,「建築物の敷地」に含まれない,グラウンド境界の建築物にあたる塀は,確認申請を行わずに建築されたことになり,建築基準法第6条違反(注4)であると,して別途告発しました。


(注4)「広瀬川の清流を守る条例」第9条では,事前に「市長の許可」が必要,建築基準法第6条では,事前に「建築主事による確認済証の交付」が必要。事前に許可・確認が必要な点で両者は似ているが,建築基準法第6条には清流条例第9条2項にあたるものはない


建築基準法違反による告発は,地検でも扱いに困った(清流条例第9条2項違反は,8/29付け告発状⇒10/3受理で提出から受理まで35日間建築基準法第6条違反は,9/12付け告発状⇒翌年1/30受理で提出から受理まで140日間で9条違反の4倍かかっている)とみえ放置していたと考えられるが,地検は捜査権があるので,清流条例違反で起訴できないとしても,建築基準法違反で起訴できたはずで,建築基準法で起訴しないのは「幇助罪」にあたると考えている,と清流条例違反不起訴に対する審査申立書に書き添えた(12/18)ところあわてて受理(翌1/30受理)したとみえて,清流条例より建築基準法で追い込むのが良いように思えたけれど,環境を保全して次世代に引き継ぐための保全率の規定と違って,建築基準法は建築時における履行義務を意味し,違法建築物があっても時効は進行すると考えられ,そもそも,通知建築物の敷地(図4青枠内)では,グラウンド外周の建築物「塀」存在しないが,実際のところ,塀は確認申請を行っていて,建築物の敷地はグラウンド全体敷地(図4赤枠内)であり,それを(図4青枠内と)偽って通知」して伐採を行い,保全率の規定もみたしているとしているので,建築基準法違反では起訴できないと諦めていたのであるが,

参考になるかも知れないと思って見ていた,伊東市長の「卒業証書」をめぐる問題で,「偽卒業証書」...「有印私文書偽造」...とやっていて,「チラ見せ」は(虚偽私文書)行使にならない...

と,ここに来て,なんで今まで気づかなかったのと思ったけれど,

告発事実

被告発人は,宮城第一高校第2グラウンドを事業者として造成する際,広瀬川の清流を守る条例で定められた環境保全のための保全率および伐採に関する規制から免れるため,内容虚偽の文書および図画(図4参照)を作成して仙台市長に通知し,条例の規定に違反するグラウンドを造成した(刑法第156条「虚偽公文書作成罪」,刑法第158条1項「虚偽公文書行使罪」)。

で2025年仙台市長選の日,告発しました(注5)。


(注5)自分として,「広瀬川の清流を守る条例」第9条違反での告発にこだわっていたので,虚偽公文書(図画)の写し(図4)を手元にもっていたのに対応が遅すぎた。

結局のところ,第9条第2項の規定がネックになって身動きとれず,条例改正しかない,地検の(裏弁護人としての)不正な解釈を許す,こんな条文(第9条→第13条→第18条)作った方が悪い,と思っていたのであるが,虚偽公文書「行使」罪というゲームチェンジャーが出てきて,結果的に清流条例第9条第2項の「通知しなければならない(=行使しなければならない)の規定が,建築基準法の建築物の定義(法2条1号),敷地の定義(同施行令1条1号)(それぞれ保全率,伐採の規定に対応*)とともに,とどめを刺してくれたのである(起訴された場合)。

*建築基準法違反で行った告発状の容疑事実は以下のとおり,

  1. トイレ,倉庫と同時に施行した門および塀は建築物であり(法2条1号),敷地は「一の建築物又は用途上不可分の関係にある二以上の建築物のある一団の土地」(施行令1条1号)と定義されているので,敷地に含まれていない門および塀は違法建築物である
  2. 「一団の土地」(施行令1条1号)である敷地を証拠資料1の図(図4参照)の青枠内とすると,グラウンド利用者はグラウンドから直接トイレを利用できず,狭い通路では大型のグラウンド備品を倉庫に収納できない。
  3. 「広瀬川の清流を守る条例」では,伐採を行った場合,その代替樹を敷地内に植樹する必要があるが,被告発人らは敷地とは別のグラウンド南端川沿いに植樹している

今回の虚偽公文書作成・行使の告発が,建築基準法違反の告発と同様に,仙台地検に「放置」され,時効(7年)となる恐れがあり,メディアは情報提供しても一切とりあげないので,これら一連の記事をブログとして記録しています。

「環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか」ー今後の展開は不明です。


[参考文献]本記事を作成するにあたりまして,「河川の環境保護と条例ー清流保全条例を中心に」,竹下賢,環境技術 22, 650-653 (1993) を大変参考にさせていただきました。お礼申し上げます。

環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(2)法の番人

2021年3月4日,仙台地検に告発状を持参しました。

仙台地方検察庁,Wikipediaより
仙台地方検察庁,Wikipediaより

2名の職員に対応していただき,そのうちベテランらしい1名のかたと次のようなやりとりがありました。

(地検)ご職業は?

(私)?

(地検)内部資料にするだけです

(私)〇〇○○です

告発状に目をとおしたあと

(地検)(薄ら笑いを浮かべながら)なぜ住民訴訟にしないのですか?

(私)答えず(注)

(地検)(告発状証拠資料として添付した,グラウンド衛星写真

証拠資料として添付したグラウンド衛星写真,画像右の「保全率60%」は右隣に接する国家公務員宿舎の保全率,地検からは,画像左の民間アパート(保全率0%)を指摘される
告発状証拠資料として添付したグラウンド衛星写真,画像右の「保全率60%」は右隣に接する国家公務員宿舎の保全率,地検からは,画像左の民間アパート(保全率0%)の保全率の規定違反を指摘される(Google Earthの衛星写真に,宮城県が仙台市に通知した開発行為に関わる土地関係の図面を重ねて作成)

を見ながら)「グラウンド周辺には,他にも保全率の規定を満たしていない住宅がある(画像左)。そちらから捜査することになる。」

と,告発状を提出すれば,周辺住民も処罰されるかも,という脅しともとれる発言がありました。


注:告発にあたり,広瀬川の清流を守る条例に関する過去の訴訟を調べていたら次のような訴訟があることが分かりました。

マンション建設取り消し訴訟,facebookより
マンション建設取り消し訴訟,facebookより

この訴訟は,マンション建設反対の住民が,市長の許可を取り消すように訴えたもので,訴訟の結果どうなったかは見つけられなかったのですが,おそらく,住民側が敗訴し,それだけでなく,マンション建設反対運動に対して,業者側が住民側に損害賠償を請求したというような展開になったのではないかと思い,そのような判例があるので,仙台地検が告発状を提出しようとする際,薄ら笑いを浮かべて,「なぜ住民訴訟にしないのか」と言ってきたのではと推察します。

告発状を検察庁に提出すれば「様式に問題がなければ黙って受け取る」と告発の仕方を調べた記事に書かれていたので,仙台地検の異例の対応に驚きで,多分不起訴にするだろうな(出して見た段階で「不起訴」といわれたようなものである)という印象を受けました。


2021年3月17日 告発状を提出後,仙台地検に「なぜ住民訴訟にしないのか」と言われたことについて気になったので再検討し,

告発状を提出すること自体は問題無い:市長に対して,「許可取り消し」をもとめているのではない,市長が「許可不要」と言っているので,県知事が許可をうけずに(通知をせずに)条例の規定に違反する人工芝グラウンドを設置したことを告発しただけ,ですが

上記のマンション建設反対運動の記事に,「訴状は16頁に及ぶもので争点は8点ほどあるのですが,なにぶん複雑でわかりにくいもので,…」とあり,

自分が提出した告発状は証拠資料を含め8頁,争点は2点(保全率の規定違反と伐採の規定違反)であり,伐採の規定に関しては,(保全率の規定に比べると)複雑でわかりにくいので,告発状を一旦取り下げ,争点を保全率の規定違反の1点に絞ったシンプルな告発状を提出することにしました。

2021年4月26日 争点を保全率の規定違反の1点に絞り,証拠写真を告発状に組み込んだA4用紙1枚のみの告発状を提出しました

2022年4月28日 2021年7月9日付けで受理された上記の告発状について,「不起訴」とする処分通知書が届きましたので,不起訴理由について開示するように請求しました。

2022年5月23日 不起訴とした検察官より,(不起訴処分の理由)罪とならず,という告知書

不起訴理由告知書
不起訴理由告知書

が届きました。

検察が,たとえば死刑を求刑して,理由を問い合わせても「罪となる」だけで良いのかということです。不起訴だから良いのではと思われるかも知れませんが,実際、多くの冤罪事件では,最初に「死刑」という結論があって,「罪となる」具体的な理由を探すために捜査を行い,起訴するということが実際に行われているのです。

宮城県知事の広瀬川の清流を守る条例違反被疑事件は「裏冤罪事件」なのです。

仙台地検が不起訴処分に対する「審査申し立て」を妨害するため,具体的な理由を明かさず「罪とならず」といっているのは明らかなので,検察官に「罪とならず」とした具体的な理由を伺いたいと電話しましたが「答えられない」ということでした。

2022年6月22日 検察審査会に

不起訴処分を不当とする理由:

...保全率は,環境保全の基本であり,保全率が規定の24%を大幅に下回る6%以下となる宮城県知事の行った開発行為は極めて悪質な犯罪にあたる...

宮城県知事が県税を使い事業者として行った9000㎡にも及ぶ広大な環境保全区域の土地に関わる保全率の規定に違反する開発行為が,「罪とならず」と具体的な理由を開示することなく免責されるものでない。...

という「審査申立書」を提出しました。

2022年10月6日 検察審査会より,2022年10月5日付けで

議決の趣旨:本件不起訴処分は相当である

議決の理由:...検察官がした不起訴処分の裁定を覆すに足りる証拠がないので,上記趣旨のとおり議決する。

という議決の要旨が届きました。

広瀬川の清流を守る責務のある「仙台市民から選ばれた」審査官が,検察官の裁定を妥当と議決したこと,と

「つまらないからやめろ」

という声が聞こえたので撤退することにしました。

つづく