<広瀬川の自然を壊すもの>
宮城県が2020年夏に,広瀬川角五郎地区の第2種環境保全区域である税務大学校仙台研修所跡地において,これまで数十年以上にわたって保全されてきた自然環境を,アスファルトでほぼ全面舗装して破壊したうえに人工芝を施行して作った,宮城第一高第2グラウンド(総敷地面積9235.05㎡)について紹介します。
このグラウンドは,人工芝によって一見,保全率(環境保全区域において,土のままで植物が植わっているか植えられる状態の自然環境を残した土地が敷地全体に占める割合)の規定24%を満たしているようにみえますが,人工芝は植物でなく,世界各国で削減に取り組んでいる環境負荷の大きい使い捨てプラスチックであり,しかも人工芝は土の上に直接施工されているのでなく,土のグラウンドをアスファルトで舗装したうえに施工されているので,
宮城第一高第2グラウンドの実際の保全率は6%以下で,この点だけでも,広瀬川の清流を守る条例(保全率24%以上)に違反する「違法グラウンド」です。
違反条項
国の機関又は地方公共団体が環境保全区域において建築物その他の工作物の新築等を行う場合,条例第9条第2項の規定により,あらかじめ市長にその旨を通知しなければならず,通知なく工作物の新築を行った場合,条例第9条第1項の規定に違反することから,条例第19条(1)において5万円以下の罰金に処する旨を規定。
(条例では,保全率の規定違反や,樹木の伐採の規定違反など個々の違反条項に対して罰則を設けているわけでなく,個々の条項に反する行為を「(条例において最も重い責務を負っている)市長の許可を得ずに行った行為」として罰則を設けています)
違反事実(証拠)
宮城県は条例の規制に関わる第2種環境保全区域(6581.09㎡)において,広さ6000㎡超の人工芝グラウンド,高さ2 m超の境界塀,高さ5 m超の防球塀(*),高さ5 m超の照明灯(図2)(**),トイレ,倉庫などの工作物を築造したが,総敷地面積9235.05㎡の92%相当にあたる8465.46㎡の建築物の敷地以外のグラウンド部分(図3赤枠内全体面積9235.05㎡のうち同図青枠内建築敷地769.3㎡を除いた部分)の人工芝グラウンド,塀,照明灯等の工作物の新築(図2)に関して,条例第9条第2項で定められた市長への通知をすれば
1.「工作物に関わる敷地」の保全率が規定の24%を大幅に下回る6%以下になり(図1B,図3)
2.河川に接する土地においては河川から最低2mの部分を保全用地とする規定にもグラウンド西の河川側人工芝が直接河川に接している部分は基準を満たさない(図1A写真手前のアスファルト地盤人工芝部分,図1B写真下左の保全用地が途切れている部分)
ために人工芝グラウンド等の工作物の設置に関する通知を行わなかった。
また,
3.建築物(トイレ,倉庫)の敷地(図3青枠内)の変形(旗竿地)を理由として建築のため(※)に保全区域内の樹木の伐採を行ったが,条例で定められた,当該「建築物の敷地」において自然的環境を回復するための代替樹や生垣の植樹,壁面緑化,屋上緑化等の措置を一切行っておらず,
この点においても条例第9条の規定に違反している。
※2022年3月補足注: 宮城県は2021年度,図3北東部角に「部室」と称する建築物を造成したが,本来「トイレ」や「倉庫」などの当初建設した建築物は「部室」と同じ敷地北東部の環境保全区域外に建設すべきで,グラウンド造成時に「トイレ」,「倉庫」を環境保全区域内に先行建設し,翌年度に建設時期をずらして「部室」を建設したのは,建築を理由とする樹木の違法伐採が目的であったことを明白に示している。
さらに,
4.トイレの屋根の色(図1B参照)に関しても,基準外の色相(5RP)と彩度(10以上)で条例に適合していないと思われる。
注*:宮城県は高さ 5 m超の防球塀について,これは高さ15m以下の鉄柱と防球ネットであり,通知の必要な工作物(塀)ではないとしている。なお,条例では高さ15m以下の鉄柱であっても,災害時等以外は通知が必要な工作物である。
注**:宮城県は高さ5 m超の照明灯に関して,これは公共のための照明灯であり,通知の必要な工作物(公共のためでない照明灯)ではないとしているが,この照明灯には図2にみえる(クリックして拡大)ように,公共スペースのグラウンド外に光が漏れないように遮光板が設けられている。なお,条例では公共のための照明灯であっても,災害時等以外は通知が必要な工作物である。
補注:保全率は「工作物の敷地」(分母)に関わる「保全用地」(分子)の割合を示すもので,宮城県がグラウンド周辺の「塀」や「照明灯」(図2)を「工作物」であると認めると,アスファルト地盤の「人工芝グラウンド」が工作物でないとしても,これらの塀や照明灯が工作物の敷地を規定して実際に確保されている保全用地だけでは保全率の規定違反となるので,人工芝グラウンドに加えて,グラウンド周辺の塀や照明灯も工作物として認めておらず,通知を行っていない。宮城県が本グラウンドで工作物として認めて通知しているのは,敷地内で事業者が(建ぺい率等の基準を満たす限り)自由に設定できる,図3青枠内の建築敷地(建築に関わる敷地)の建築物(および建築物に関わる工作物)だけである。
解説
宮城県は条例第9条第2項で規定される地方公共団体にあたり,工作物の築造等の条例の規制に関わる行為を環境保全区域において行うには,市長の「許可」でなく市長に「通知」を行う必要があります。
この規定は一見,市民や民間業者に比べて県や国に甘いように見えますが実際は逆で,市に対して優位にたつ県や国が市に圧力をかけて許可基準に満たない開発行為を行うことを認めない厳しい規定になっており,許可基準は市のパンフレットである条例許可申請の手引き(旧版はこのグラウンドの違法性を一目瞭然に示す図ー上に図4として示すーがあるため仙台市が抹消し,この図を無くした新版に改訂)によるものでなく,条例,条例施行規則,条例施行規則実施要領の条文によってのみ規定されます。
条例は条例施行規則第12条により「許可を要しない行為」のみ規定していますが,仙台市は,「許可を要しない行為以外はすべて許可を要する」という条例の解釈では許可が必要かどうか市民にわかりにくい,という理由で「許可を要する行為」のみを条例許可申請の手引きに記載し,それ以外の行為であれば保全率が0%になる行為でも許可不要と条例の自然環境保護の趣旨から逸脱した違法な条例の運用を行っています。
例えば人工芝グラウンドは,
- 仙台市のいう「許可を要する工作物」でないので,市民や民間業者等が造成する場合は,グラウンド部分を許可不要として,それ以外の部分の建築物と市が条例許可申請の手引き9ページに記載した工作物のみの許可を受ければ,グラウンド部分の保全率が0%で敷地全体の保全率が規定の条件を満たしていない場合でも無許可の築造で処罰されることはありません(注1)が,
- 条例の規定では,人工芝グラウンドは条例施行規則第12条に記載されている「許可を要しない工作物」でないので,宮城県が環境保全区域で人工芝グラウンドを造成するには「通知必須」となり,通知なく行えば,許可なく築造を行ったことになり条例第9条第1項の規定により処罰されます(注2)。
注1:違法かどうかは裁判官が決めますので,条例において最も重い責務を負っている仙台市長が違法でないとして告発しなくても,市長とともに広瀬川の自然環境を守るべき責務のある市民や,環境保護団体等の告発・通報により捜査の対象となり,裁判で有罪となり処罰される場合があります(注3)。
注2:違法かどうかは裁判官が決めますので,条例において最も重い責務を負っている仙台市長が(県(知事)に遠慮して,あるいは県(知事)からの恫喝や圧力で)条例違反を告発せず,市長とともに広瀬川の自然環境を守るべき責務のある市民や,環境保護団体等も社会的不正に気付かない,または気付いても無関心で告発・通報しない場合,処罰されない場合があります(注3)。
注3:裁判以前の問題ですが,捜査権のある警察・検察が通報・告発をうけて捜査したとしても,検察が不起訴とした場合は裁判官の判断を仰がれることもなく,犯罪と思われる行為が放置されることになるのです。したがって,検察官は裁判官より強い権限をもっているのです。
仙台市や宮城県はレジ袋有料化などの環境保護の取り組みについてはホームページ等で広報していますが,自身は,レジ袋のお化けのような,使い捨てプラスチックの人工芝グラウンドを違法に造成し,マイクロプラスチックや人工砂(人工芝上に散布される産業廃棄物(古タイヤや建築廃材)等から作った緩衝材)による河川・海洋・大気汚染や温室効果ガスの排出を増大させ,人類全体への犯罪である地球環境破壊を行っています。
宮城第一高第2グラウンドは,宮城県と仙台市が共同で,県税を使って,環境保全区域にある次世代を担う若者の教育の場で行っている,反社会的な地球環境破壊活動の象徴なのです。
環境保護は地球全体で早急に取り組むべき課題であり,2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)に17ある開発目標の11番目から15番目にあたります。
仙台市には,SDGs に40年以上先駆ける1974年9月に「…衆知と総力を結集し,市民あげて広瀬川の清流を守ることを決意」して制定された「広瀬川の清流を守る条例」という素晴らしい環境条例があり,条例をスローガンで終わらせず,実のあるものとする第9条の規定(民間の行為を規制する第1項および,行政の行為を規制する第2項)がありますが,この条例において最も重い責務を負う仙台市長や,警察・検察といった法の番人の,自身や自身の所属する組織の利益を守るための意図的な不作為により,条例が葬り去られ,司法制度が崩壊し,市民の未来が奪われようとしているのです。