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環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(3)第9条

1974年9月28日制定された「広瀬川の清流を守る条例」は,かつては,仙台市民にとって憲法のようなものだ,といわれていたようであるが,その理由は格調高い前文から想像することができる:

https://www.city.sendai.jp/hirosegawasose/kurashi/shizen/midori/midori/seryu/documents/jyourei.pdf
広瀬川の清流を守る条例 前文

条例は第1条(趣旨),第2条(市長の責務),第3条(事業者の責務),第4条(市民の責務)と続き,

第9条(環境保全区域における行為の制限)で

条例第9条1項
第9条1項

(1)~(6)に具体的にあげられている行為を行う者は,あらかじめ「市長の許可」を受けなければならない(注1),と規定し


(注1)第9条には,第2項として

第9条2項
第9条2項
 とあり,国の機関又は地方公共団体が開発行為を行う場合,「市長の許可」でなく,「市長への通知」をもって行うよう規定されている。この特別規定の理由は(自分自身も最近ようやく理解したところであるが)明らかである:
1.市長自身が事業者となって開発行為を行う場合,「自分で自分を裁くことはできない」という自然法の大原則があるので,市長は自分自身に対して許可を与えることができない。そこで,事業者である市長が,市長に対して通知を行う形で市長の許可を得ずに工事を行うこととなる。当然ながら,通知内容は,(市長の許可が得られる)広瀬川の清流を守る条例施行規則 第14条(環境保全区域における許可基準)に適合しているものでなければならない(条文の ...前項の規定にかかわらず,...通知しなければならない)。
2.国や県など地方公共団体が開発行為を行う場合,市長は国や県の機関に対して法的には許可を与えることはできる。しかしながら,県や国は行政制度上,市の上位機関にあたり,市は県や国の指導監督下に行政行為を行うのが基本であるから,市長が県知事など上位の行政機関に所属する事業者に許可を与えるのでなく,上位の機関に属する事業者が市長に通知することをもって行うかたちとする。通知内容は,前項1.の(事業者である)市長が市長に通知する場合と同様,条例施行規則第14条の規定に適合している必要がある。
 (以上が第2項で,県や国のような,法的には市長が許可を与えることができる機関に対しても,通知しなければならない,としている公式理由であるが,「衆知と総力を結集し(条例前文)」次世代に対する「重大な責務(責任+義務)」に根ざして制定された条例であるから,今般,宮城第一高校第2グラウンド造成工事で実際に起こったように,市長が県や国の圧力に屈して,迎合して,あるいは共謀して「不正な許可」を与えたり,「許可不要」として実質的に不正な許可を与える事態がくることを想定して,これを防ぐため,県や国など市より上位にある機関に対しては「(市長は)許可を与えない」ので,「市長に(自ら行う開発行為が許可基準に適合していることを)通知するよう」規定しているのである)。くだけて言うと,市長は県や国の事業者の開発行為に「お墨付き」は与えません。結果については「自己責任」でお願いします,ということです。

この第9条の規定に違反した者(市長の許可を受けずに行った者,または市長に条例の規定に適合した通知を行わず(市長の許可を受けず)開発行為を行ったもの)に対し,第13条(中止,原状回復命令)で市長は工事の中止や,原状回復を命ずることができ,第18条(罰則)で,第13条の規定による命令に違反した者を処罰することができる,としており,この条例が単なる憲章的なものでなく,法的な拘束力をもったものであることを示している(末尾の参考文献参照)。

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2024年春,兵庫県知事を巡る混乱を知り,思うところあって,宮城県知事を再告発することにしました。

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本題に入る前に,まず前回までのおさらいを時系列で説明していきます。

1.宮城県は「広瀬川の清流を守る条例」で第二種環境保全区域に指定されている土地(図1,税務大学仙台研修所校跡地)

宮城第一高校第2グラウンド造成時における第二種環境保全区域(ピンクの帯の間の水色の部分,仙台市都市計画情報提供サービスより),仙台研修所は税務大学をさす
図1 宮城第一高校第2グラウンド全体敷地における第二種環境保全区域(ピンクの帯の間の水色の部分,仙台市都市計画情報提供サービスより),税務大学仙台研修所校当時「校舎」は保全区域外(図ピンク帯より上側)に建築されており保全率はほぼ100%。グラウンド(「校庭」)であるから敷地中央部に樹木はないが,グラウンド外周には樹木が良好に保全されていた(図2)

において,宮城第一高校第2グラウンドを造成する際に,グラウンド東側で前所有者である国によって良好な状態で保全されてきた樹木(図2,⇔,⇒)

宮城第一高校第2グラウンド造成前
図2.宮城第一高校第2グラウンド造成によって伐採されたグラウンド東南部にあった樹木(⇔,⇒,Google Earthより)

を伐採する目的で,「樹木の植わっていた場所」に恣意的に旗竿状の「建築物の敷地」と称する土地(図4青枠内)を設定し,この敷地にトイレ,倉庫を建築するには樹木の伐採が不可欠として伐採し,それ以外の土地(図4赤枠内から青枠内の土地を差し引いた土地)においては,条例第9条で規定される市長の許可を必要とする工作物はないとして,市長の許可を得ず(市長に通知せず)に,これまで保全率100%で保全されてきたグラウンド敷地のほぼ全体(96%)をアスファルトで舗装して徹底的に破壊し,プラスチックの人工芝で被覆した上に,緩衝用ゴムチップを散布し,条例の規定に適合しない保全率5%程度の「人工芝グラウンド」を造成し,現在も,広瀬川および太平洋に環境汚染物質である,ゴムチップやマイクロプラスチック(劣化した人工芝破片)を排出し続けている

トイレ,倉庫の建築後数年して建築した更衣室(〇印,Google Earthより)
図3.宮城第一高校第2グラウンド現況。トイレ(画像上のグラウンド境界に見える赤屋根),倉庫(灰青色屋根)の建築をするためやむを得ないとして樹木(図2)を伐採し,税務大学時代保全率100%で保全されてきた校庭(図1)をアスファルト舗装して破壊し,保全率6%に満たないーこのグラウンド用地の保全率は24%,つまり土地の約1/4を,土のままか,植物が植わっている状態の保全用地としなければならない-「人工芝グラウンド」を造成した。-さらに宮城県の行った行為の”悪質性”を示すものとして,グラウンド造成工事完了後,部室棟(図中〇印)を,グラウンド開設当時は駐輪場としていた保全区域外の土地(画像左上角)に増築した(トイレは部室棟に併設できるし,併設しないとしても税務大学当時のように,保全区域外ー図1参照-に設置できる。ハンドボール(orホッケー)コートが不自然に北側(図中左)保全区域外に寄せられている点に注目-サッカーグラウンドと同じ南北位置に設置すれば,トイレ,倉庫は樹木を伐採せず,ハンドボールコート北に十分設置できる。(Google Earthより-ご注意,この画像は2Dの衛星写真をもとに立体再構成して任意の視点からの画像を生成しています。高さ10mのフェンス等は正確には再現されていませんが影は残っています)。宮城第一高校第2グラウンドは,宮城県が仙台市の全面協力のもと,仙台地検の組織的支援(「罪とならず」という理由による不起訴,不起訴できないものについては告発状放置)により現在も広瀬川,太平洋をゴムチップ,マイクロプラスチックで汚染しながら,運用中の宮城県を象徴する違法(と思われる)グラウンドである
宮城第一高第2グラウンド敷地図
図4.仙台市に請求して入手した,宮城県知事が仙台市長に「通知」した文書に添付された,宮城第一高第2グラウンド敷地図。市長の許可が必要な工作物は図中青枠内のトイレ,倉庫のみで,それ以外の赤枠内から青枠内の土地を除いた土地に許可の必要な工作物はないとして,「グラウンド境界塀」,「防球フェンス」,「照明灯」,「人工芝グラウンド」等の工作物を市長の許可を得ずに(市長に通知することなく)設置した(図3)
(なぜ,宮城県が「人工芝グラウンド」を,環境保全区域の自然を原状回復がほぼ不可能な状態になるまで破壊し造成したかについては,次回,「環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(4)人工芝運動」で考察する予定です)。
2.仙台市に宮城第一高校第2グラウンドの違法性を指摘したところ(「環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(1)裏切り」),
樹木の伐採については,土地の「(自作自演の)著しい不整形」(条例施行規則第14条七ロ)を理由とし
保全率については,条例の「工作物に係わる敷地」(図4赤枠内)における「保全用地」の割合ではなく,「宮城県がグラウンド一部に恣意的に設定した建築物の敷地(図4青枠内)」に係わる「保全用地(図4緑)」の割合をさし,この定義では保全率は30%
であるので「環境保全区域内における県の行為は、条例及び施行規則に適合していることを確認しております。」(2020年12月28日付け仙台市よりの回答,整理番号2-2966) なお,
  • 「人工芝グラウンド」については,人工芝は「手引き」で許可必要な工作物のリストにないので,「許可不要」
  • グラウンド外周の「塀」については防球ネットという「鉄柱」であるので「許可不要」
  • 照明灯については,(公共スペースに光が漏れるのを防ぐ遮光板つきであるが)「公共の用に供するもの」なので許可不要だそうである。

ここまで読まれたかたは,

それでは,仙台市の環境保全区域で庭をつくる場合,土地全面を人工芝グラウンドにしたり舗装して駐車場にして保全率0%としても,処罰されない(注2)と思われるかも知れませんが,これは,事業者が宮城県知事(や大手の民間事業者の場合)であるからで,一般市民が,同じことをして,それが仙台市から指摘されれば,原状回復を求められ(条例第13条),従わなければ処罰され(条例第18条)ます。


(注2)ピンだけで土にとめた(簡単に剥がせる=土地に定着しない)人工芝や,(土間コンクリートや舗装のない)土のままの駐車場(土のままであれば土は土地に定着しない,車も人工物であるが土地に定着しないので,条例でいう「工作物」にあたらない)なら違法にならない


3.そこで,市長に代わり,事業者である宮城県知事を条例第9条違反で告発しました(「環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか(2)法の番人」)が,

仙台地検は,「罪とならず」という理由で不起訴とし,
検察審査会に申し立てを行いましたが,「不起訴相当」という議決となり撤退しました。

(ここから経緯を簡単に述べながら本題に入ります。途中経過が不要なかたは最後の部分にお進みください)


再告発するにあたり,仙台地検が不起訴とした理由が分かりません。

 詳細は省略しますが,
2021年4月の告発では,告発事実を「条例第9条違反」((市長が許可不要と言ったので)市長の許可を受けずに行った)としましたが,今回は「条例第9条2項違反」(図4の青枠の土地において「通知」をしなかった)で再告発しましたが,「不起訴」となり,審査申し立てを行いましたが,「不起訴相当」となり,

 

不起訴となった理由について,

①条例違反3年の時効である(告発後電話で,工事開始と同時に時効が進行するという見解を言われたので,時効は保全率の基準を満たすように違法工作物が撤去されてから進行する,と内容証明郵便で回答)

条例第9条第2項違反には罰則がない(罰則があるのは第1項違反のみである)

の2点を検討し,引き時かと思いましたが,

①については「高速道路の論理」(注3)で,土地ごとに定められた保全率の規定は,道路交通法による制限速度のようなものである。制限速度を超えて走行する限り時効が進行しないように,保全率の規定に違反する工作物が保全率の規定を満たすまで撤去されない限り時効は進行しない。保全率が制限速度と異なるのは,自然環境は一旦破壊されると,原状回復が非常に困難であるため,事前に市長の許可が必要なだけである。


(注3)高速道路の論理 ファイル共有ソフト開発者が著作権法違反幇助に問われた事件の弁護団がとった論法:ファイル共有ソフトの開発者が著作権法違反幇助に問われるのであれば,高速道路で速度違反をしたら,高速道路を作った人が,速度違反幇助に問われるのか,という論理。法令解釈で,比較的わかりやすい道路交通法のたとえで相手の主張を打ち砕く手法


②については,県知事は市長の許可を受けずに通知によって工事を行ったものであり,市長の許可が得られない(=条例の規定に違反する)行為を行った場合は,通知をしようがしまいが,「市長の許可を得ずに行った者」として処罰される

ということで,告発事実を「条例第9条1項違反」として3度目の告発を行いましたが,当初の「裏冤罪事件」を晴らしてやる,という意気込みは失せ敗北感濃厚でした。

この告発にあたって障害にしかなっていない,広瀬川の清流を守る条例,第9条2項の規定を避けるため,実は,2回目の告発のあと,図4の通知の,建築物の敷地を青枠内の旗竿状の土地としたのであれば,「建築物の敷地」に含まれない,グラウンド境界の建築物にあたる塀は,確認申請を行わずに建築されたことになり,建築基準法第6条違反(注4)であると,して別途告発しました。


(注4)「広瀬川の清流を守る条例」第9条では,事前に「市長の許可」が必要,建築基準法第6条では,事前に「建築主事による確認済証の交付」が必要。事前に許可・確認が必要な点で両者は似ているが,建築基準法第6条には清流条例第9条2項にあたるものはない


建築基準法違反による告発は,地検でも扱いに困った(清流条例第9条2項違反は,8/29付け告発状⇒10/3受理で提出から受理まで35日間建築基準法第6条違反は,9/12付け告発状⇒翌年1/30受理で提出から受理まで140日間で9条違反の4倍かかっている)とみえ放置していたと考えられるが,地検は捜査権があるので,清流条例違反で起訴できないとしても,建築基準法違反で起訴できたはずで,建築基準法で起訴しないのは「幇助罪」にあたると考えている,と清流条例違反不起訴に対する審査申立書に書き添えた(12/18)ところあわてて受理(翌1/30受理)したとみえて,清流条例より建築基準法で追い込むのが良いように思えたけれど,環境を保全して次世代に引き継ぐための保全率の規定と違って,建築基準法は建築時における履行義務を意味し,違法建築物があっても時効は進行すると考えられ,そもそも,通知建築物の敷地(図4青枠内)では,グラウンド外周の建築物「塀」存在しないが,実際のところ,塀は確認申請を行っていて,建築物の敷地はグラウンド全体敷地(図4赤枠内)であり,それを(図4青枠内と)偽って通知」して伐採を行い,保全率の規定もみたしているとしているので,建築基準法違反では起訴できないと諦めていたのであるが,

参考になるかも知れないと思って見ていた,伊東市長の「卒業証書」をめぐる問題で,「偽卒業証書」...「有印私文書偽造」...とやっていて,「チラ見せ」は(虚偽私文書)行使にならない...

と,ここに来て,なんで今まで気づかなかったのと思ったけれど,

告発事実

被告発人は,宮城第一高校第2グラウンドを事業者として造成する際,広瀬川の清流を守る条例で定められた環境保全のための保全率および伐採に関する規制から免れるため,内容虚偽の文書および図画(図4参照)を作成して仙台市長に通知し,条例の規定に違反するグラウンドを造成した(刑法第156条「虚偽公文書作成罪」,刑法第158条1項「虚偽公文書行使罪」)。

で2025年仙台市長選の日,告発しました(注5)。


(注5)自分として,「広瀬川の清流を守る条例」第9条違反での告発にこだわっていたので,虚偽公文書(図画)の写し(図4)を手元にもっていたのに対応が遅すぎた。

結局のところ,第9条第2項の規定がネックになって身動きとれず,条例改正しかない,地検の(裏弁護人としての)不正な解釈を許す,こんな条文(第9条→第13条→第18条)作った方が悪い,と思っていたのであるが,虚偽公文書「行使」罪というゲームチェンジャーが出てきて,結果的に清流条例第9条第2項の「通知しなければならない(=行使しなければならない)の規定が,建築基準法の建築物の定義(法2条1号),敷地の定義(同施行令1条1号)(それぞれ保全率,伐採の規定に対応*)とともに,とどめを刺してくれたのである(起訴された場合)。

*建築基準法違反で行った告発状の容疑事実は以下のとおり,

  1. トイレ,倉庫と同時に施行した門および塀は建築物であり(法2条1号),敷地は「一の建築物又は用途上不可分の関係にある二以上の建築物のある一団の土地」(施行令1条1号)と定義されているので,敷地に含まれていない門および塀は違法建築物である
  2. 「一団の土地」(施行令1条1号)である敷地を証拠資料1の図(図4参照)の青枠内とすると,グラウンド利用者はグラウンドから直接トイレを利用できず,狭い通路では大型のグラウンド備品を倉庫に収納できない。
  3. 「広瀬川の清流を守る条例」では,伐採を行った場合,その代替樹を敷地内に植樹する必要があるが,被告発人らは敷地とは別のグラウンド南端川沿いに植樹している

今回の虚偽公文書作成・行使の告発が,建築基準法違反の告発と同様に,仙台地検に「放置」され,時効(7年)となる恐れがあり,メディアは情報提供しても一切とりあげないので,これら一連の記事をブログとして記録しています。

「環境保全区域で違法な庭をつくるとどうなるか」ー今後の展開は不明です。


[参考文献]本記事を作成するにあたりまして,「河川の環境保護と条例ー清流保全条例を中心に」,竹下賢,環境技術 22, 650-653 (1993) を大変参考にさせていただきました。お礼申し上げます。

滅びつつある広瀬川の自然

<広瀬川の自然を壊すもの>

宮城県が2020年夏に,広瀬川角五郎地区の第2種環境保全区域である税務大学校仙台研修所跡地において,これまで数十年以上にわたって保全されてきた自然環境を,アスファルトでほぼ全面舗装して破壊したうえに人工芝を施行して作った,宮城第一高第2グラウンド(総敷地面積9235.05㎡)について紹介します。

宮城第一高第二グラウンド
図1A.宮城第一高第2グラウンド(アスファルトで全面舗装した上に人工芝を施行した「広瀬川の清流を守る条例」の保全率の規定等に違反する人工グラウンド).2020年11月28日撮影

このグラウンドは,人工芝によって一見,保全率(環境保全区域において,土のままで植物が植わっているか植えられる状態の自然環境を残した土地が敷地全体に占める割合)の規定24%を満たしているようにみえますが,人工芝は植物でなく,世界各国で削減に取り組んでいる環境負荷の大きい使い捨てプラスチックであり,しかも人工芝は土の上に直接施工されているのでなく,土のグラウンドをアスファルトで舗装したうえに施工されているので,


宮城第一高第2グラウンドの実際の保全率は6%以下で,この点だけでも,広瀬川の清流を守る条例保全率24%以上)に違反する「違法グラウンド」です。

図1B 宮城第一髙第2グラウンド(衛星写真,9235.05㎡)の南側(画像下側)2/3以上6581.90㎡は保全率24%の第二種環境保全区域にあるので,その約1/4を保全用地として確保する必要があるが,実際の保全用地(画像で木が植わっている土のままの土地)は6%にも満たず,このグラウンドは広瀬川の清流を守る条例に違反する違法グラウンドである(Google Earth©より)。
図1B 宮城第一髙第2グラウンド(衛星写真,9235.05㎡)の広瀬川に接する南側(画像下側)6581.90㎡は保全率24%の第二種環境保全区域にあるので,その約1/4を保全用地として確保する必要があるが,実際の保全用地(画像下端で木が植わっている土のままの土地)は第二種環境保全区域にある土地の6%にも満たず,このグラウンドは広瀬川の清流を守る条例に違反する違法グラウンドである(Google Earth©より)。

違反条項

国の機関又は地方公共団体が環境保全区域において建築物その他の工作物の新築等を行う場合,条例第9条第2項の規定により,あらかじめ市長にその旨を通知しなければならず,通知なく工作物の新築を行った場合,条例第9条第1項の規定に違反することから,条例第19条(1)において5万円以下の罰金に処する旨を規定。

(条例では,保全率の規定違反や,樹木の伐採の規定違反など個々の違反条項に対して罰則を設けているわけでなく,個々の条項に反する行為を(条例において最も重い責務を負っている)市長の許可を得ずに行った行為として罰則を設けています)

違反事実(証拠)

宮城県は条例の規制に関わる第2種環境保全区域(6581.09㎡)において,広さ6000㎡超の人工芝グラウンド,高さ2 m超の境界塀,高さ5 m超の防球塀(*),高さ5 m超の照明灯(図2)(**),トイレ,倉庫などの工作物を築造したが,総敷地面積9235.05㎡の92%相当にあたる8465.46㎡の建築物の敷地以外のグラウンド部分(図3赤枠内全体面積9235.05㎡のうち同図青枠内建築敷地769.3㎡を除いた部分)の人工芝グラウンド,塀,照明灯等の工作物の新築(図2)に関して,条例第9条第2項で定められた市長への通知をすれば

1.「工作物に関わる敷地」の保全率が規定の24%を大幅に下回る6%以下になり(図1B,図3)

2.河川に接する土地においては河川から最低2mの部分を保全用地とする規定にもグラウンド西の河川側人工芝が直接河川に接している部分は基準を満たさない(図1A写真手前のアスファルト地盤人工芝部分,図1B写真下左の保全用地が途切れている部分)

ために人工芝グラウンド等の工作物の設置に関する通知を行わなかった

また,

3.建築物(トイレ,倉庫)の敷地図3青枠内)の変形(旗竿地)を理由として建築のため(※)に保全区域内の樹木の伐採を行ったが,条例で定められた,当該「建築物の敷地」において自然的環境を回復するための代替樹生垣の植樹,壁面緑化屋上緑化等の措置を一切行っておらず,

この点においても条例第9条の規定に違反している。

※2022年3月補足注: 宮城県は2021年度,図3北東部角に「部室」と称する建築物を造成したが,本来「トイレ」「倉庫」などの当初建設した建築物「部室」と同じ敷地北東部の環境保全区域外に建設すべきで,グラウンド造成時に「トイレ」,「倉庫」を環境保全区域内に先行建設し,翌年度に建設時期をずらして部室」を建設したのは,建築を理由とする樹木の違法伐採が目的であったことを明白に示している。

さらに,

4.トイレの屋根の(図1B参照)に関しても,基準外の色相(5RP)と彩度(10以上条例に適合していないと思われる。

注*:宮城県は高さ 5 m超の防球について,これは高さ15m以下の鉄柱防球ネットであり,通知の必要な工作物(塀)ではないとしている。なお,条例では高さ15m以下の鉄柱であっても,災害時等以外通知が必要な工作物である。

注**:宮城県は高さ5 m超の照明灯に関して,これは公共のための照明灯であり,通知の必要な工作物(公共のためでない照明灯)ではないとしているが,この照明灯には図2にみえる(クリックして拡大)ように,公共スペースのグラウンド外に光が漏れないように遮光板が設けられている。なお,条例では公共のための照明灯であっても,災害時等以外通知が必要な工作物である。

補注:保全率工作物の敷地(分母)に関わる「保全用地」(分子)の割合を示すもので,宮城県がグラウンド周辺の「塀」「照明灯」(図2)「工作物」であると認めると,アスファルト地盤の「人工芝グラウンド」工作物でないとしても,これらの照明灯工作物の敷地を規定して実際に確保されている保全用地だけでは保全率の規定違反となるので,人工芝グラウンドに加えて,グラウンド周辺の照明灯工作物として認めておらず,通知を行っていない。宮城県が本グラウンドで工作物として認めて通知しているのは,敷地内で事業者が(建ぺい率等の基準を満たす限り)自由に設定できる,図3青枠内の建築敷地(建築に関わる敷地)の建築物(および建築物に関わる工作物だけである。

図2 宮城県が第2種環境保全区域内で通知することなく築造した,人工芝グラウンド,塀,照明灯,などの工作物
図2 宮城県が第2種環境保全区域内で通知することなく違法に築造した,人工芝グラウンド,塀,照明灯などの工作物(河川に沿った塀全て,高さ5m超の防球塀,高さ5m超の公共スペースへの遮光板つきの照明灯は,条例で「許可不要」とされている工作物以外はすべて「許可必要」とすると,市民にわかりにくいので,市が条例とは別に「許可必要」な工作物のみを指定し,それ以外の工作物(人工芝グラウンドなど)はすべて「許可不要」としている,ゆるい仙台市の規準でも「許可(通知)必要」な工作物である。
・
図3 宮城第一高第2グラウンド敷地図(仙台市に請求して入手)。建築敷地(図中青枠内)以外の工作物について通知すると保全率が法定の24%をはるかに下回る6%以下になることから,宮城県は第二種環境保全区域に関わるグラウンド部分の工作物(図2および実際の衛星写真図1B参照)の築造にあたって通知を行わず,建築物の敷地部分(青枠内)の建築物および工作物のみを通知し,建設敷地部分の保全用地(緑色)の保全率が185.73/609.35=30%をもって条例の規定に適合しているとして,保全用地面積185.73㎡と図中に緑色で塗りつぶして表示しているが,この図は総敷地面積の2/3以上が第二種環境保全区域にある当グラウンドにおいて,「青枠内建築物敷地以外には保全用地をとっていない」ことを明示しており,図らずも違法性を自ら認めているものである。
図4 宮城第一高第二グラウンドが条例の規定を満たさない違法グラウンドであることを一目瞭然に示す市民向けパンフレット2018年版の図。アスファルト地盤の人工芝グラウンドは駐車場と同じで保全用地にあたらない。また,保全用地は河川に沿った土地では,図左に示すように,河川全面に沿って24%以上確保しなければならない。なお,図の「空地」とは「保全用地」をさし,「空地のルール」は「保全率の規定」をさす。保全率は当グラウンド施工時は24%に緩和されている。同図をもとに仙台市に違法性を指摘したところ,仙台市は同図をパンフレットから削除した。(条例許可申請の手引き2018年6月版p.3より)
図4 宮城第一高第2グラウンド(図1~図3参照)が条例の規定を満たさない違法グラウンドであることを一目瞭然に示す市民向けパンフレット2018年版の図。アスファルト地盤の人工芝グラウンドは駐車場と同じで保全用地にあたらない(図右×)。また,保全用地は河川に沿った土地では,図左○に示すように,河川全面に沿って最低2m幅で環境保全区域内の土地の24%以上確保しなければならない(図1B参照)。なお,図の「空地」とは「保全用地」をさし,「空地に関するルール」は「保全率の規定」をさす。保全率は当グラウンド施工時は24%に緩和されている。同図をもとに仙台市に違法性を指摘したところ,仙台市は同図をパンフレットから削除した。(条例許可申請の手引き2018年6月版p.3より)

解説

宮城県は条例第9条第2項で規定される地方公共団体にあたり,工作物の築造等の条例の規制に関わる行為を環境保全区域において行うには,市長の「許可」でなく市長に「通知」を行う必要があります。

この規定は一見,市民や民間業者に比べて県や国に甘いように見えますが実際は逆で,市に対して優位にたつ県や国が市に圧力をかけて許可基準に満たない開発行為を行うことを認めない厳しい規定になっており,許可基準は市のパンフレットである条例許可申請の手引き旧版はこのグラウンドの違法性を一目瞭然に示す図ー上に図4として示すーがあるため仙台市が抹消し,この図を無くした新版に改訂)によるものでなく,条例条例施行規則条例施行規則実施要領の条文によってのみ規定されます。

条例条例施行規則第12条により「許可を要しない行為」のみ規定していますが,仙台市は,「許可を要しない行為以外はすべて許可を要する」という条例の解釈では許可が必要かどうか市民にわかりにくい,という理由で「許可を要する行為」のみを条例許可申請の手引きに記載し,それ以外の行為であれば保全率が0%になる行為でも許可不要と条例の自然環境保護の趣旨から逸脱した違法な条例の運用を行っています。

例えば人工芝グラウンドは,

  1. 仙台市のいう「許可を要する工作物」でないので,市民や民間業者等が造成する場合は,グラウンド部分を許可不要として,それ以外の部分の建築物と市が条例許可申請の手引き9ページに記載した工作物のみの許可を受ければ,グラウンド部分の保全率が0%で敷地全体の保全率が規定の条件を満たしていない場合でも無許可の築造で処罰されることはありません(注1)が,
  2. 条例の規定では,人工芝グラウンドは条例施行規則第12条に記載されている「許可を要しない工作物」でないので,宮城県が環境保全区域で人工芝グラウンドを造成するには「通知必須」となり,通知なく行えば,許可なく築造を行ったことになり条例第9条第1項の規定により処罰されます(注2)。

注1:違法かどうかは裁判官が決めますので,条例において最も重い責務を負っている仙台市長が違法でないとして告発しなくても,市長とともに広瀬川の自然環境を守るべき責務のある市民や,環境保護団体等の告発・通報により捜査の対象となり,裁判で有罪となり処罰される場合があります(注3)。

注2:違法かどうかは裁判官が決めますので,条例において最も重い責務を負っている仙台市長が(県(知事)に遠慮して,あるいは県(知事)からの恫喝や圧力で)条例違反を告発せず,市長とともに広瀬川の自然環境を守るべき責務のある市民や,環境保護団体等も社会的不正に気付かない,または気付いても無関心で告発・通報しない場合,処罰されない場合があります(注3)。

注3:裁判以前の問題ですが,捜査権のある警察・検察が通報・告発をうけて捜査したとしても,検察が不起訴とした場合は裁判官の判断を仰がれることもなく,犯罪と思われる行為が放置されることになるのです。したがって,検察官は裁判官より強い権限をもっているのです。

仙台市や宮城県はレジ袋有料化などの環境保護の取り組みについてはホームページ等で広報していますが,自身は,レジ袋のお化けのような,使い捨てプラスチックの人工芝グラウンドを違法に造成し,マイクロプラスチックや人工砂(人工芝上に散布される産業廃棄物(古タイヤや建築廃材)等から作った緩衝材)による河川・海洋・大気汚染や温室効果ガスの排出を増大させ,人類全体への犯罪である地球環境破壊を行っています。

宮城第一高第2グラウンドは,宮城県と仙台市が共同で,県税を使って,環境保全区域にある次世代を担う若者の教育の場で行っている,反社会的な地球環境破壊活動の象徴なのです。

環境保護は地球全体で早急に取り組むべき課題であり,2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)に17ある開発目標11番目から15番目にあたります。

仙台市には,SDGs に40年以上先駆ける1974年9月に「…衆知と総力を結集し,市民あげて広瀬川の清流を守ることを決意」して制定された「広瀬川の清流を守る条例」という素晴らしい環境条例があり,条例をスローガンで終わらせず,実のあるものとする第9条の規定(民間の行為を規制する第1項および,行政の行為を規制する第2項)がありますが,この条例において最も重い責務を負う仙台市長や,警察・検察といった法の番人の,自身や自身の所属する組織の利益を守るための意図的な不作為により,条例が葬り去られ,司法制度が崩壊し,市民の未来が奪われようとしているのです。