環境保全区域で家を建てるには

変更履歴

2021/01/12 高さ10m超の塀の写真を図5として追加し,一部誤っていたリンク先を修正しました.


家を新築するときやリフォーム,建て替えるとき,通常の土地の場合はハウスメーカーや工務店が建築確認をとって建築基準法に則った家を建ててくれる.

土地が環境保全区域にある場合,良好な自然環境に恵まれているのは素敵なことだけれど,その自然環境を開発から守るために,建築基準法に加えてさまざまな環境に関する法律(条例)の制約をうけ,特に敷地面積が限られている個人住宅の場合,思ったような住宅を建てられない場合も多い.

環境保全に関わるのは家というより,ほとんどが庭(外構)の部分で,外構も含めて大手のハウスメーカーに家の新築を依頼する場合はともかく,通常は必要最低限の外構を家の建築時にハウスメーカーに依頼して行い,後日外構業者に外構の造成を依頼するのが一般的と思われるが,多くの外構業者は環境保護のための法律を熟知しているわけでないので,結果的に違法な外構を造成してしまい施主が刑事罰(罰金,懲役刑)をうける場合がある.

以下仙台市の広瀬川沿いの第二種環境保全区域(図1)

図1 違法人工芝グラウンドが造成される前の宮城第一高第二グラウンド敷地(Google Earthより)
図1 グラウンド造成前の素晴らしい広瀬川河川環境-クリックして拡大してご覧下さい(Google Earthより)

において違法に造成された宮城第一高第二グラウンドについて(図2)

以前の税務大学校の校舎のように,条例に従って川岸と反対の道路側に設置すべき建築物であるトイレと倉庫を,樹木(下の画像参照)を違法に伐採して更地化して保全緑地内に設置して環境破壊,2020年11月28日
図2 造成後の宮城第一高第二グラウンド,これまで良好に保全されてきた第二種環境保全区域の自然(図1)をグラウンド敷地全面をアスファルトで舗装したうえに人工芝/人工土を敷き,さらに保全されてきた樹木を違法に伐採してトイレと倉庫を建設して破壊した,2020年11月28日撮影

公開されている情報および公開を請求した情報をもとに,この工事の違法性を以下の2点(保全率と樹木の伐採)に絞って説明しながら,環境保全区域で家を建て庭を造る場合の注意点を説明したいと思います.


1)保全率について

保全率は敷地に対する保全用地の割合をいい,

保全率 = 保全用地面積/工作物の敷地面積

となる(条例施行規則第14条第1項一ハ(1)).

保全率100%は人の手が入らず,自然の状態が完全に保存されている状態である.

環境保全区域では,用途地域ごとに最低でも守るべき保全率があり,仙台市の場合は160㎡未満の狭小敷地を除いて

  1. 特別環境保全区域(保全率42%)
  2. 第一種環境保全区域(保全率36~30%)
  3. 第二種環境保全区域(保全率30~24%)

の順に保全率が大きい.

環境保全区域以外では,保全率0%でも構わない(建ぺい率の基準は満たす必要があるが,建築物以外の敷地は全面舗装して自然の状態を残さなくても構わない).

「保全用地」とは「自然的環境の保全のために確保されている土地」(条例施行規則第14条第1項一ロ(1))のことで,裸地(らち)の他に植物が植わっているか(すぐに)植えられる状態の土地をいう.

「工作物」とは条例第9条第1項に一度だけ出てくる(図3)用語で,

図3 広瀬川の清流を守る条例 第9条第1項
図3 広瀬川の清流を守る条例 第9条第1項

条例施行規則にも定義がないので,文字通り「(保全用地の上に)工作によって作られた物(で,土地または建築物に定着するもの)」のことを言う(注1)

「工作物」は「建築物」(建築基準法でいうもの)と「建築物以外の工作物」に分けられますが「工作物」といった場合は,「建築物」,「建築物以外の工作物」の両方をさします.

工作物 = 建築物 + 建築物以外の工作物


注1 条例の許認可を行う仙台市河川課は,工作物とは,条例手引き9ページに示したもの(条例第9条第1項のただし書き(図3赤線部)に指定するもののうち,条例施行規則第12条第1項一ヌヲワカヨタレソツで示されているもの)のみが許可を要する(建築物以外の)工作物であり,

条例施行規則許可が不要とされている工作物以外の工作物

= 許可を要する工作物

でなく

条例手引き9ページで示されている工作物のみ

= 許可を要する工作物

という,「法令」(条例施行規則)よりも河川課が発行した「パンフレット」の条例手引きの記載が優越する,と主張して平行線を辿っておりますが,もし河川課のいうとおりだとすると,

  • 第二種環境保全区域(保全率24%)で敷地全面を無届けでアスファルトで舗装(保全率0%)して駐車場や,さらに人工芝と人工土で覆って人工芝グラウンドにしても,アスファルト舗装や人工芝は(河川課の考えでは)工作物ではないので問題無い(宮城第一高第二グラウンド)としているので,全面駐車場や全面人工グラウンドにする場合は,駅前も第二種環境保全区域も保全率の基準は変わらないことになる.

さらに驚くべきことに,

  • 特別環境保全区域(保全率42%)で敷地全面を無届けでコンクリートで舗装(保全率0%)して,さらにコンクリート全面を原色の黄色で塗装することも可能(河川課の確認済み)となり,特別環境保全区域を全面コンクリートで舗装して「はげ山」にして(樹木の伐採は施行と同時に出来ないが,保全用地をとる必要が無いので株元までコンクリートで埋められた樹木はいずれ枯死し,枯死した場合は無届けで伐採可能)黄色のコンクリートの山にすることも清流条例の規定では可能とか.

つまり,仙台市は従来工作物とされてきた(舗装された)通路や駐車場は工作物であるという記載(少なくとも2018年11月までの条例環境保全区域のあらましには記載されていた)を外し,「保全」の概念を形骸化させ,これまで50年近く市民が守りつづけてきた広瀬川の清流を守る条例を死んだも同然の状態にしました.

(清流条例の権限に属する事項を審議するには条例第6条第1項で規定されるように「広瀬川清流保全審議会」の審議が必要であり,審議会がこのような保全概念の放棄を認めるわけがないはず?と思われますので,審議会で審議されたか調査中です)


それでは,図4に示す,宮城県の行った宮城第一高第二グラウンドの造成工事の保全率をみてみましょう.

図4 敷地構成図(仙台市に情報開示を求めた資料をもとに作成)
図4 敷地構成図(仙台市に情報開示を求めた資料をもとに作成)

この敷地における工作物(*は河川課は工作物でない,あるいは,工作物であるが規模によって許可を要する工作物でないと主張しているもの)は,

  1. グラウンド*およびその周囲に設置された排水溝*
  2. トイレ
  3. 倉庫
  4. 塀(グラウンド敷地東西北面(高さ10m超,図5),南面(高さ5m超,図2))
  5. 塀(駐車場敷地北面*(高さ2 m),東面(高さ10m超))
  6. 門*
  7. 照明灯(高さ5m超)
  8. 自動車,原動機付自転車,自転車駐車のための施設*(北東角三角地)
  9. 水飲み場*
  10. 埋設管(グラウンド下の暗渠排水管,グラウンド周囲の排水溝から下水への排水管,トイレへおよび水飲み場への上下水道管,トイレの汚水管,照明灯,トイレおよび倉庫への電気配線を通す管)*
図5 グラウンド東西北面を取り囲む柵(高さ10m超)と照明搭(高さ5m超),2021/01/11撮影
図5 グラウンド東西北面を取り囲む塀(高さ10m超)と照明灯(高さ5m超),2021/01/11撮影

であるが,工作物の定義(条例施行規則をとるか条例手引きをとるか)如何によらず上記4.5.塀が敷地外周を規定しているので,工作物に係わる敷地面積(注2)は9235.06 ㎡となるが,保全率を考えるうえでは,敷地のうちの第二種環境保全区域の敷地面積6581.90㎡について考えれば良いので

保全率 = 保全用地面積/工作物に係わる敷地面積(第二種環境保全区域)=366/6581.90 = 0.0556 = 5.6 %となり,規定の24%(従来30%だったのが,より効果的な緑化の推進のため,2018年年7月より24%に緩和とか┐( ̄ヘ ̄)┌)の1/4も満たしておらず違法です.

この場合は,許可を受けずに(注3)工作物の築造を行ったこととなると思われ,条例第19条の規定により事業者である宮城県知事は「5万円以下の罰金刑」に処せられる恐れがあり,さらに,仙台市長は条例第2条の規定により,原状回復命令を行う責務があるので,その指示に従わない場合は,条例第18条の規定により,「1年以下の懲役」または,「10万円以下の罰金刑」に処せられる恐れがあります.


注2 本グラウンドでは,

工作物に係わる敷地面積 > 建築敷地面積

であり,建築敷地は工作物敷地に含まれる(建築物も工作物なので,なお,建築物敷地を工作物敷地から除外して別途保全用地を定義することはできない).建築敷地面積は,建ぺい率を計算する場合にのみ使用される.

一般の狭小住宅では,

建築敷地面積 > 建築物以外の工作物に係わる敷地面積

なので,工作物に係わる敷地面積に建設敷地面積を使っても問題無い.


注3 条例第9条第2項に,国または地方公共団体が工事を行う場合,「許可」を得る必要はなく,「通知」すれば良いとあるが,これは,好き勝手にできるという意味でなく,国や地方公共団体が工事を行う場合は,仙台市に許可を受けるのでなく,自治体自身で許可を受ける要件に達しているか確認したうえで「通知」することとなっているだけで,通知を行った工事が条例で規定されている要件に適合していない場合は,「通知」でなく「犯罪予告」にあたるだけで,許可をとらずに工事を行ったことになる.


2)樹木の伐採について

記事を改め,「環境保全区域で家を建てるには(2)」として近日中に公開します.

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