万葉集では「思い草」として歌われている「南蛮煙管」(ナンバンキセル)の花が咲きました。うつむいて咲く様が、物思いにふけるように見えることから、思い草と名付けられたようです。素敵な名前だと私は思うのです。
しかし、江戸時代から花の形が南蛮人が吸っている煙管の形に似ていることから「南蛮煙管」と名前が変わったようです。時代の流行で花の名前が変わったようですが私は「思い草」のほう好きです。かつては山野に咲いていたそうですが近頃は見かけません。ススキが植えられた鉢物の根もとにたくさん咲きました。
「南蛮煙管」は葉緑素を持たないので、自分で光合成をすることができず、ススキに寄生して咲く不思議な花です。
亡き義母が育てていたものです。受け継いでもう何年咲いたことでしょう。今年も咲いてくれました。万葉からの植物が令和に咲いた喜びは猛暑の夏に弱っている私を感動させてくれます。花の力を感じる夏の出来事を嬉しく受け止めています。
「道の辺の尾花が下(もと)の思い草 今さらになぞ物か思はむ」
意味
(道端の尾花(ススキ)の下の陰にある思い草のように、あなただけを思っているのに、今さら何を思い迷うことがあるでしょうか。「忍ぶ恋」を象徴した歌だそうです。)
(万葉集)
